経済

2025.05.06 13:00

缶詰やパスタが売れ始めたら景気後退間近、過去の不況で示唆

Shutterstock.com

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ここ数週間で経験しているように、景気の先行きに暗雲が垂れ込めると、買い物カゴの中身は微妙ながらも予想できる形で変わる。投資家が株価の変動に目を凝らし、アナリストが雇用統計を吟味し続ける中、別の指標にも注目がいく。それは消費者が購入する食品だ。

調査によると、食品の消費パターンは公式な景気後退宣言よりも先に大きく変化することが一貫して示されており、厳しい経済状況を乗り切るべく備えている企業にとって、貴重な初期の警告シグナルとなっている。全米経済研究所(NBER)によると、食品購入パターンの変化は1980年以降7回あった主な景気後退すべての前に見られ、数値となって現れる変化は景気後退宣言が出される3~6カ月前に起こっている。

景気後退入りする前に、購入する食品が変化

倹約モードになると、消費者は単に買い物を減らすのではなく、買うものが変わる。米セイクリッド・ハート大学の2021年の研究では、米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻を機に世界的な金融危機とその後発展した大不況について、不況前後とその最中にわたる6万人以上の米国人のデータを分析した。その結果、経済状況が悪化するにつれて栄養摂取のパターンが望ましくない方向へシフトすることが分かった。大人は精製穀物や脂肪分の多い食品の摂取が増え、子どもは不況下で添加糖の摂取量が増えていた。

パスタや缶スープ、マカロニ・粉末チーズソースセットの売上は通常、正式に景気後退入りする4~6カ月前に増加する。これらのストックしておけるお馴染みの食品は家計を圧迫する一方で、不確実な時期に精神的な安らぎを与えてくれる。米農務省経済調査局の調査によると、経済状況が悪化すると「低所得国では食料品などの必需品の支出割合が大きくなり、穀物のような安価な主食の食費に占める割合が大きくなる」という。

重要な例として、多くの家庭にとって高級なカット肉が高嶺の花になると、ツナ缶や豆類、ピーナッツバターの消費が増える。過去には卵の消費量も増えたが、米国では現在卵の価格が非常に高いことを考えると今回もそうなるかはわからない。肉と同じくタンパク質を含むこれらの食品では手頃な価格で栄養がとれる。

科学者向けのサイトResearchGate(リサーチゲート)に掲載された研究によると、不況時には人々は優先順位を見直し、必需品と嗜好品を選別するという。景気後退は購買力に大きく影響し、消費者は高価な食品の消費を大幅に減らす一方で、手ごろな代替品にシフトすると指摘している。外食を控えて自宅で食事をとるようになるため、小麦粉や砂糖、基本的な製菓・製パン材料の購入が著しく増える。2008年の景気後退期には、家庭で消費する製菓・製パンの材料の売上は公式に景気後退入りが宣言される前の四半期に前年同期比32%増となった。

有名ブランドの商品よりもスーパーなどのプライベートブランドや類似品が売れるようになり、市場シェアの変化は主食部門で最も大きい。これは「高所得の消費者の所得に占める食費の割合は低所得者のものより小さい」とするエンゲルの法則に従った動きで、「不況や所得の減少によって家計全体における食費の割合が大きくなる」ことを意味する。

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翻訳=溝口慈子

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