いいタイミングだ。ウクライナ軍は6月上旬に南部と東部で反転攻勢を始めて以降、戦闘で西側製戦車の損失を重ね、保有数が減ってきていたからだ。
届いた重量68トン・乗員4人のM1A1について、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「旅団を増強する準備が進められている」と述べている。
ウクライナへ送られたM1は、米海兵隊が使っていた火力強化型だ。このモデルは、M1のほかのモデルと同様に主砲の120ミリメートル滑空砲、複合装甲、高性能の光学機器を備えるほか、さらに遠方目標指示器(FTL)と呼ばれるレーザーシステムも搭載している。これによって、最大約6.4キロメートル先の目標に関するデータを集め、近くの砲兵部隊に送ることも可能だ。
M1は世界最高峰の戦車だが、ロシア軍の地雷や対戦車ミサイル、火砲に対して無敵というわけではない。同じ世代の戦車であるドイツ製のレオパルト2A6やスウェーデン製のStrv122、英国製のチャレンジャー2と同じく、損傷することもあるだろう。
ウクライナは西側諸国からレオパルト2A6を21両、Strv122を10両、チャレンジャー2を14両受け取った。その後、反攻作戦に着手してから3カ月後までに、レオパルト2A6を3両、チャレンジャー2を1両失い、Strv122少なくとも1両も撃破まではいかないものの損傷を被った。このほか、40両供与されたレオパルトのより古いタイプである2A4も少なくとも3両失っている。
ウクライナには31両のM1以外に、およそ200両に達する軽量なレオパルト1A5戦車も届き始めている。ウクライナ軍参謀本部はこれらを利用して、最近の戦車損失を補うだけでなく、新たな機械化旅団を編成したり、戦車大隊をもたなかった旅団に戦車大隊を追加したりすることもできるだろう。