欧州

2023.09.25 09:30

ロシア軍防空を翻弄するウクライナ、巡航ミサイルで黒海艦隊司令部を爆破

巡航ミサイル「ストームシャドー」を搭載したトーネードGR.1戦闘機(Peter R Foster IDMA / Shutterstock.com)

巡航ミサイル「ストームシャドー」を搭載したトーネードGR.1戦闘機(Peter R Foster IDMA / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍のスホーイSu-24M爆撃機から発射された英国製のストームシャドー巡航ミサイルが22日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリにあるロシア黒海艦隊司令部を爆破した。

同じ爆撃部隊、より詳しく言えばウクライナ西部に拠点を置く第7戦術航空旅団は9日前、セバストポリの黒海艦隊停泊地も攻撃し、ドライドック(乾ドック)に入っていた揚陸艦とディーゼル・エレクトリック潜水艦を破壊していた。

重量1300キログラムのストームシャドーの破壊力は簡単に説明できる。ストームシャドーは2段式のタンデム弾頭を搭載していて、これがコンクリート製や鋼鉄製の目標を撃ち抜いて内側から爆発させるのに役立つのだ。1段目の弾頭は爆発によって目標の外殻に穴を空け、そこを通ってより大型の2段目が内部に到達する仕組みだ。

とはいえ、これは第7戦術航空旅団がクリミアの防空網を通り抜けて攻撃できている説明にはなっていない。世界で最も危険な部類に入るであろう防空網をウクライナ側はどうやって突破しているのだろうか。ロシア軍に詳しいオーストリア人の作家トム・クーパーはこんな仮説を立てている。

・ロシア側のレーダーを妨害し、防空ミサイルの発射を阻んだ
・おとりを発射してロシア側に防空ミサイルを撃たせ、それによって発射機のミサイルを使い果たさせた
・やはりおとりを使ってロシア側の防空システム運用者の注意を引き付けつつ、別の方向からストームシャドーを撃ち込んだ

あるいは、これら3つの戦術を組み合わせた。ともあれ「ウクライナ側は、ロシア側がストームシャドーを迎撃できる可能性はゼロに近いと言えるほど、その防空を圧倒している」とクーパーはニューズレターに記している。

ロシアは2022年2月にウクライナに全面侵攻する前、2014年に侵略して違法併合したクリミアに、ロシア最高のレーダーや地対空ミサイルシステム、対空砲を多数配備していた。

具体的には、射程約240キロメートルのS-400地対空ミサイルシステム少なくとも4基、その発射機最大40基のほか、より射程の短い対空システムであるパーンツィリ、ブーク、トーア計50基近くなどだ。これらの発射機や対空砲に合図を出すポドレットUレーダーも複数設置していた。さらに、クリミアの北に隣接するウクライナ南部ヘルソン州を占領したあとは、州の南部に射程の長いS-300地対空ミサイルシステムを配備した。このS-300は、いわば「クリミアの防空システムの防空」という役割を果たしていた。

何重にもなった恐るべき防空システムだ。だが「結局のところ、これはうまく機能しなかった」とクーパーは指摘している。

ウクライナ軍は8月上旬以降、ヘルソン州のS-300、クリミアのS-400を2基、付近のポドレットUレーダーを立て続けに破壊した。さらに、ロシア軍がレーダーなどを設けていた黒海西部の石油掘削施設2カ所も奪還した。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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