第82旅団の歩兵大隊は当初、ドイツから供与されたマルダーを40両、米国から供与されたストライカーを90両運用していた。ウクライナ軍が南部方面の反転攻勢に乗り出してから15週間で、第82旅団はストライカーを少なくとも3両失った。
だが、ウクライナにとってありがたいことに、ドイツはマルダーを追加で60両、米国はストライカーを追加で100両強、供与することを約束している。つまり、これらの装甲車はチャレンジャー2ほど貴重ではないということだ。
さらに言えば、ウクライナ軍の強襲戦術は歩兵を中心としたものに進化してきている。南東部方面で戦っているウクライナ海兵隊が、装甲トラックと機動力のあるT-80戦車を組み合わせた方式で襲撃するのを好む一方、南西部で戦う陸軍と空中機動軍の部隊は、歩兵戦闘車やトラックで先陣を切り、戦車は後方から火力支援を行うという戦い方をすることが多くなっている。
第82旅団の戦車搭乗員がチャレンジャー2を「スナイパー」と表現したり、第47旅団のドイツ製レオパルト2A6戦車が主砲を榴弾(りゅうだん)砲のように高い角度に上げて射撃したりしているのも、これと関連している。
こうした戦い方は型破りかもしれないが、結果に異論はないだろう。ウクライナ軍はゆっくりとではあるが前進を続けており、南部ではロシア軍の3重の主要防衛線のひとつを突破したのだ。
20日の攻撃の映像には映っていないが、これに先立ってウクライナ軍の砲兵部隊も重要な仕事をしていたはずだ。ウクライナ軍の榴弾砲やロケットランチャーの運用部隊は、南部反攻の知られざる英雄である。正確な情報に基づいた西側製兵器による遠距離砲撃によって、ウクライナ軍は一般的に想定される攻撃側と守備側の損耗比率を見事に裏切ってみせている。
従来、攻める側の軍隊は、守る側の軍隊が人員や装備を1失うごとに、3失うと考えられてきた。だが、ウクライナ軍はこの反攻で攻撃側であるにもかかわらず、主に砲撃の効果で、人員や兵器の損耗を守備側のロシア軍以下にとどめている。
(forbes.com 原文)