重量13トン、定員11人(乗員3人、歩兵8人)のこの車両は、ウクライナ軍の保有する歩兵戦闘車としては今もなお、武装を改良した後継車種のBMP-2に次いで多い。とはいえ、BMP-1にはいくつか欠点がある。しかも大きな欠点だ。
BMP-1は鋼製装甲の厚みがわずか6ミリメートル(mm)強しかなく、防御力が弱い。さらに攻撃面でも、主砲の73mm低圧滑腔砲は打撃力が不足している。
そこで、ウクライナの砲銃科学技術センターは一部のBMP-1の古い砲塔を、はるかに強力な30mm機関砲を備える新たな砲塔で換装し、火力を強化した。これには、余剰なBMP-1を輸出するにあたって価値を高める目的もあったとみられる。新たな砲塔は元のものより大型で、スペースを確保するために2人分の座席が取り除かれている。
同センターは改修後の定員9人のモデルを「BMP-1U」と名づけた。このほど、この「ウクライナ製」BMP-1Uが、ウクライナの戦線のロシア側で駆り出されていることが、ロシアのプロパガンダ(宣伝)動画で確認された。2008年にジョージア(当時の呼称はグルジア)であった出来事の思わぬ余波と言えるだろう。
ジョージアはウクライナからBMP-1Uを15両購入し、2007年に受け取って就役させていた。その1年後、ロシアがジョージアを侵略した。ロシア軍部隊はその過程で、ジョージア軍のBMP-1Uをすべて鹵獲(ろかく)したようだ。ジョージアは2011年にBMP-1Uを再び調達している。
ロシア側は奪い取ったBMP-1Uを、ある程度の時間をかけて調べたらしい。15年後、ロシア軍は元ジョージア軍のBMP-1Uの一部あるいはすべてを前線の部隊に配備した。ロシア軍はウクライナ軍のBMP-1Uも2両鹵獲している。
ロシア側のBMPの乗員がBMP-1Uを欲しがる理由は、わざわざいうまでもないだろう。ノーマルのBMP-1よりも、ウクライナで改修されたUタイプのほうが高性能だからである。
半面、ロシア軍の自動車化狙撃連隊にとって、このタイプは補給が面倒なのもまた明らかだ。Uタイプのシュクバル砲塔はウクライナ製の部品でできているからである。したがって、15両程度のBMP-1Uを保有する部隊は、何両かをきちんと使える状態に保つために、ほかの車両から部品を取って使う「共食い整備」をしなくてはいけなくなるかもしれない。