欧州

2023.09.18 10:00

牽引車に高性能砲塔を装着 ウクライナ軍の改造兵器、戦場で活躍

MT-LB装甲牽引車(Popsuievych / Shutterstock.com)

ウクライナの戦線のロシア側には、手元にあるものを組み合わせてつくったはいいものの、全体としてうまく統合されていない即席の戦闘車両が登場している。先日紹介した、70年物のMT-LB装甲牽引車の上に80年物の2M-3艦載砲を取り付けた車両がまさにそうだ。MT-LB-2M-3は砲塔が不安定で、砲撃すると振動してしまう。ただ、こうした代物があるからといって、重要な真実を見誤らないようにしたい。

自作の装甲車両は不格好で出来の悪いものと決まっているわけではないのだ。その証拠が、ウクライナ側が改造したMT-LBである。かなり新しく相当有能なRWS(遠隔操作式の無人銃架・砲塔)「セルダル」を採用したもので、このMT-LB-セルダルは少なくとも1年はウクライナの戦場を駆け回っている。

セルダルは、トルコの防衛企業アセルサンとウクライナの国家キーウ設計局(ルーチ)が共同で開発した。機関銃2挺、重量約90kgのステューフナ-P(スキーフ)対戦車ミサイル用2連装発射機、レーザー測距器、昼夜対応の光学機器を備え、これらがすべて安定した砲塔に統合されている。

乗員は車内の操作パネルを使って照準を合わせる。ルーチによれば、ステューフナ-Pミサイルは約4.8km先の厚さ800mmの鋼鉄を貫通できるという。これは、セルダルが少なくともこの距離では光学装置などによって正確に照準を合わせられることを含意する。

最も重要な働きをしているのは、水平・垂直の2軸方向のジャイロ安定化装置かもしれない。ロシア海軍歩兵隊はMT-LBに上下2連装25ミリ機関砲をボルトで固定した際、安定化についてはあまり考えていなかった。まったく考えていなかったと言ってもいいかもしれない。

ロシア軍がウクライナで使用している車両のウォッチャーとして知られるエドワード・ペロフは、MT-LB-2M-3についてブログでこう書いている。「2M-3の液圧装置は放棄され、完全な手動誘導に変更されたようだ。これは労力を要しない最も簡単な解決策ではあるが、射撃の有効性に影響が出ることが予想される」
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翻訳・編集=江戸伸禎

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