欧州

2023.09.12 09:00

ウクライナ、状態極上のドイツ製自走対空砲「ゲパルト」を実戦配備

ゲパルト自走対空砲。2023年、オランダの国立軍事博物館で(M.J.J. de Vaan / Shutterstock.com)

ゲパルト自走対空砲。2023年、オランダの国立軍事博物館で(M.J.J. de Vaan / Shutterstock.com)

ドイツ製のゲパルト自走対空砲は、レオパルト1戦車の車台にレーダー誘導式の35ミリメートル機関砲2門を装備した車両だ。乗員は3名で、砲塔に砲手と車長、車台に操縦士が乗り込む。

ゲパルトは世界最高の自走対空砲と言っても過言ではないだろう。車長を務めたことのある人物は、ゲパルトが備えるSバンド(周波数2〜4GHz帯)の捜索レーダーとKuバンド(同12〜18 GHz帯)の追尾レーダーについて、鳥ほどの大きさの目標を捕捉・追尾できると述べている。それぞれのレーダーの探知・追尾距離は15キロメートルとなっている。

もっとも、ゲパルトは最新兵器というわけではない。ドイツのクラウスマッファイ・ベークマン(編集注:生産当時はクラウスマッファイ、ベークマンという別々の会社)は1976年後半に最初の570両を納入し、最後に納入したのも1980年のことだ。つまり、最も新しいものでも43年物なのだ。したがって、ゲパルトを現在運用するには何よりもまず、車両の状態が重要になる。

その意味で、ウクライナがとりわけ状態のよいゲパルトを入手できたらしいのは、ロシアとの戦争が続くウクライナにとってたいへん明るいニュースだ。カタール軍が2018年から短期間使用し、ドイツが買い取ったとみられる15両だ。

ロシアがウクライナに全面侵攻してから2カ月後の2022年4月、ドイツはウクライナの戦争努力のため、改修したゲパルト52両を提供すると確約していた。その後2023年6月、さらに15両の供与を表明した。このほか米国も、第三国からゲパルトを30両買い取ってウクライナに引き渡す意向を示している。第三国はのちにヨルダンと判明している。

このうちドイツからの供与分には、カタールが2022年のサッカー・ワールドカップ(W杯)中の空域防護用に取得した15両のゲパルト1A2の一部、もしくは全部が含まれていた。ドイツ政府がこれらのゲパルトの買い戻しに向けてカタール政府と交渉していることは、2月に報じられていた。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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