金正恩と会ったプーチンが中国に突きつけた「警告」

2023年9月13日、ロシア極東のアムール州で握手するウラジーミル・プーチン大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(Kremlin Press Office / Handout/Anadolu Agency via Getty Images)

北朝鮮の指導者である金正恩がロシアを訪れ、プーチンと会った。北朝鮮からロシアへの武器提供などが取り沙汰されているが、2人が何を話し合ったのか具体的な内容は謎のままになりそうだ。だが、背景を知り、手がかりを探っていくと、浮かび上がってくるものもある。

筆者は2009年の冬、ロシア、中国、北朝鮮3カ国の国境が交わる地帯に足を運んだ。中国領のすぐ向こう側に、北朝鮮とロシアを結ぶ鉄道路線が走っている。金正恩は今回、豪華な専用列車に乗って、この路線を通ってロシア入りしたもようだ。

中国領の最も奥まったところにある展望台からは、近くに踏切が寂しげな姿をさらしているのが見えた。建造物もなければ人影もなく、ただ風に雪が舞っているばかりだった。そこからは見えなかったが、数キロ先には日本海が広がっている。ここに最初の重要なヒントが潜んでいるのだが、これについてはあとで詳しく述べよう。

筆者が訪れたとき、中国側では整備されたばかりの道路をトラックが轟音を立てながら行き交っていた。少し内陸に行ったところで新しい街の建設が進められていて、主にそのための資材を運んでいたのだろう。「実績」優先の開発だったようだが。

ロシア側は見渡すかぎり雪一面で、ソ連時代にさかのぼる国境施設が点在していた。北朝鮮側はというと、そうした施設すらなかった。細い鉄道路線のほかには数キロメートル先に小屋らしきものがわずかに見えるだけで、それ以外、人工物はなかった。現在も当時からあまり変わっていないのではないかと想像する。

中国は現状の国境線に怒りを抱えている。鉄道を見渡せる場所から日本海にいたるまでの細長い土地周辺は、中国が領有していてもおかしくなかった場所だからだ。もし領有していたら、中国は日本海に開いた出口を貿易などのために確保できていた。一帯は歴史の大半を通じて中国領であり、中国がかつての領土をどれほど強く欲しているかはよく知られている通りだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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