20日にネット上に出回ったロシア空挺軍第56親衛空中襲撃連隊による複数の映像には、ウクライナ軍のマルダー歩兵戦闘車やストライカー装甲車が、ロシア軍の防御を支える最初の塹壕をゆうに通り越して、ベルボベの東へ前進する様子が映っている。これらのマルダーやストライカーが2000人規模のウクライナ空中機動軍(空挺軍)第82独立空中強襲旅団のものなのは、まず間違いない。
映像では、ロシア軍側からウクライナ軍の縦隊に砲撃が加えられ、ストライカー1両は損傷したか撃破されたように見える。それでも第82旅団のマルダーやストライカー、その後ろに続く装甲トラックの車列は前進を続け、2番目の塹壕に到達している。
ウクライナ側がロシア側の防衛線にどのくらい深く入り込んだのかはよくわからない。そのまま内側にとどまったのか、それとも退却したのかも不明だ。いずれにせよ今回の突破は、仮に一時的なものだったとしても、ロボティネから南のトクマク、メリトポリに続く軸上のロシア軍部隊にとって悪いニュースだ。ロボティネはすでに8月、第82旅団などによって解放されている。
ウクライナ軍部隊がロボティネでロシア軍の残存兵の掃討を進める間、ロシアはやむにやまれず、最後の作戦予備だった第76親衛空挺師団の一部を東部から南部に移動させた。第76師団がウクライナ軍によるベルボベ突破やトクマク、メリトポリへの前進を阻止できなければ、ほかに止められる部隊がロシア側にあるだろうか。
第82旅団による攻撃は性急ではなかった。1カ月前にロボティネを解放したあと、第46、第82独立空中強襲旅団や陸軍の第47独立機械化旅団など、メリトポリ軸に配置され装備の充実した複数の旅団を統括する第9軍団は、この集落の南で部隊を停止させ、再編成や補強を行った。
この小休止中に、ウクライナ軍の最初の偵察隊がベルボベ北西の最も外側の塹壕線をすり抜けていた。一方、第82旅団の戦車中隊はこの時期に、当時14両あった英国供与のチャレンジャー2戦車を初めて失った。
第82旅団はチャレンジャー2を接触線からやや後方に配し、ドローン(無人機)や地雷から守りつつ、移動しながら精密射撃を加えるのに使っていたようだ。しかし重量69トン、乗員4人のこの戦車の1両が、ベルボベの南で陣地間を移動中、地雷を踏んでしまった。動けなくなったチャレンジャー2は、爆薬を積んだドローンの格好の目標になった。
残りの13両のチャレンジャー2が20日のスロビキン・ライン最外周での攻撃を火力支援していたとすれば、それもやはり遠距離からだったに違いない。ロシア側の映像にはチャレンジャー2の姿はまったく見えない。