工兵部隊と民間請負業者はコンクリート製の対戦車障害物をばらまき、塹壕(ざんごう)を掘り、そしてこれがおそらく最も重要だが、何十万個という地雷を埋めた。こうして、「スロビキン・ライン」と称される、世界でもほとんど類を見ない強固な軍事要塞を築いた。
ウクライナ軍はその後、6月4日に反攻を始めたが、これまで南部と東部の主要な攻勢軸でわずか数kmしか前進できていない。ロシア軍が防衛線の北側に設けた地雷原が最大の理由である。
だが、こうした遅々とした進軍ペースは近く変わるかもしれない。8月30日かその少し前、ウクライナ空中機動軍(空挺軍)の第82空中強襲旅団が、南部ザポリージャ州の集落ベルボベ周辺で第1防衛線を越えたからだ。
ロシア陸軍の第100偵察旅団が30日にオンラインに投稿したドローン映像には、旅団からの要請でウクライナ兵に向けて砲撃が行われる様子が映っている。第100偵察旅団はこの映像を戦場での勝利を示す証拠とみなしているのかもしれないが、砲撃が加えられている場所がどこかよく見てほしい。そこは、スロビキン・ラインのいちばん外側の塹壕の内側、つまりロシア側が以前守っていたところなのだ。
軍事ウォッチャーたちの予想どおりの展開である。1週間ほど前、ザポリージャ州メリトポリに向かうルートの要衝であるロボティネをロシア軍の支配から解放した第82空中強襲旅団や第46空中機動旅団は、この攻勢軸にある次の集落であるノボプロコピウカに焦点を移していた。
ロシアによる全面侵攻を受ける前、800人ほどが住んでいたとされるノボプロコピウカは、幹線道路のT0408号─0401号沿いにある。この道路を南下していくとトクマクがあり、そこからさらに80kmほど南に下るとザポリージャ州の拠点都市のひとつメリトポリに出る。