欧州

2023.08.17 10:30

ウクライナ空挺軍、予備の最強部隊を南部の主要戦線に投入

遠藤宗生

英軍のチャレンジャー2戦車(Andrew Harker / Shutterstock.com)

ウクライナ空中機動軍(空挺軍)がついに隷下の最強部隊を展開させた。ドイツ製マルダー歩兵戦闘車、米国製ストライカー装甲車、英国製チャレンジャー2戦車などを装備する2000人規模の第82空中強襲旅団を、ウクライナ南部ザポリージャ州の集落ロボティネ周辺に投入した。ここ数日のこととみられる。

ウクライナ軍は6月4日以来、ロシアの占領軍に対して、ロボティネ方面を含む南部や東部の複数の軸で互いに連動させた反転攻勢を続けている。第82空中強襲旅団の投入は、反攻にとって良いニュースとも言えるし、悪いニュースとも言える。

第82空中強襲旅団は姉妹旅団の第46空中強襲旅団とともに、ウクライナ軍参謀本部が予備として温存してきた数少ない大規模部隊だった。第82空中強襲旅団を戦闘に参加させることによって、ロボティネから黒海に近い南部の都市メリトポリにいたる約80kmの主要な攻勢軸のひとつで、ウクライナ軍部隊は火力を大幅に増強できる。

ただ、どんな旅団も永続的に戦闘を続けることはできない。第82空中強襲旅団や第46空中強襲旅団が休息や補充、修理のためにいったん引き揚げることになった場合、代わりになる同じくらい強力な旅団はもうないかもしれない。その場合、引き揚げによって反攻は勢いを失ってしまうだろう。

これは新しい問題ではなく、ロボティネの軸に限った話でもない。たとえば、そこから東へ80kmほどに位置するモクリ・ヤリー川渓谷沿いで戦っているウクライナ海兵隊は、全4個旅団を幅16kmほどの狭いエリアに同時に展開させている。

この戦力集中投入は功を奏している。師団規模のこれら海兵隊部隊は、黒海沿岸の港湾都市マリウポリに続く道路沿いにある集落をロシア軍による占領から次々に解放している。このほど新たにウロジャイネを解放し、退却するロシア兵の上に米国製クラスター弾もお見舞いしている。

とはいえ、これらの海兵隊員たちもいずれ休息が必要になるだろう。代わりになる部隊があるのかは不明だ。ウクライナには国家親衛隊や領土防衛隊にまだ戦闘に投入していない旅団があるものの、これらの部隊は一般に、海兵旅団の実戦能力を高めている火力や訓練に欠けている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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