戦場でどちらが勝つかは砲撃戦で決することが多い。
ウクライナが6月上旬、南部と東部で複数の攻撃軸に沿ってロシアに対する反抗を開始してから、戦車や戦闘車両に関しては両軍とも同じくらい大きな損害を出している。その裏で、大砲の損害は不均衡になっている。
まず前者について確認しておくと、ウクライナ軍とロシア軍はザポリージャ州とドネツク州南部でともに戦車や戦闘車両を確認できるだけで150両強失っている。
損失数はウクライナ側のほうが170両前後とやや多いが、一般に攻める側は守る側よりも不利なので当然の結果とも言える。防御する側は地面を掘ればいいが、攻撃する側は往々にして、開けた土地を前進していかなくてはならない。
ところが大砲の損害は両軍の間で偏りがある。観測筋によると、ウクライナの反抗開始後、ロシア側が榴弾砲やロケット砲を32門破壊されているのに対して、ウクライナ側の損害は8門にとどまっている。つまり、ウクライナが大砲を1門失うごとにロシアは4門失っている。
全体の規模やこれまでの経緯も踏まえておこう。ロシアは全面戦争を仕かけた時点で、榴弾砲やロケット砲をおよそ5000門保有していた。ウクライナの保有数はその3分の1だった。ロシア側はそれだけ、失う対象となる数も多かったということになる。
とはいえ、1年半近くにわたって激戦が続くなかで、ロシアの大砲での優位性は崩れてきている。ウクライナ軍はこの間、ロシア軍の榴弾砲やロケット砲を600門破壊した。対して、ロシア軍によるウクライナ軍の榴弾砲やロケット砲の破壊数は200門にとどまっている。
言い換えると、ロシアの大砲の損害はウクライナの3倍に達している。さらに留意しておくべきなのは、ウクライナ側はこれまでに、西側諸国から1000門を超える榴弾砲やロケット砲を取得していることだ。損失分をはるかに上回る数だ。また、双方とも、保管庫に眠っていた古い榴弾砲やロケット砲も引っ張り出して使っているのはいうまでもない。