ウクライナ海軍は事実上、艦艇をもたない海軍になっているが、だからといってロシア側にとって危険な存在でなくなったわけではない。国産のネプチューン対艦ミサイルや西側製ハープーン対艦ミサイル、ミサイルを搭載したバイラクタルTB2無人機、自爆型水上ドローンなどを駆使して、ウクライナ海軍は黒海艦隊をたんに近づけないようにしているどころか、積極的に攻撃して後退させているのだ。
クリミアの港から展開するロシア艦艇は常に攻撃にさらされる。8月時点では、ロシア国内の艦艇も安全ではなかった。ロシアの艦艇は港から出る場合、短時間にとどめるようにしている。通常は、ウクライナの都市に向けて巡航ミサイルを数発発射して、そそくさと港に引き揚げている。
黒海艦隊の安全状況は今後、悪くなることはあっても良くなることはないだろう。ウクライナ軍が黒海艦隊に対する攻撃に使える長距離攻撃兵器は、数も種類も着実に増えつつあるからだ。
ウクライナは射程約1600kmの新型巡航ミサイルを開発しているし、米国のジョー・バイデン政権は射程約300kmの長距離ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」のウクライナ供与を承認する意向と報じられている。
どちらのミサイルも、前線のウクライナ側からセバストポリを攻撃できるだろう。そして、これまでウクライナ側がロシアの艦艇を次々に攻撃してきているという事実は、ロシア艦艇の位置を特定するウクライナの諜報(ちょうほう)能力に問題がないことの明白な証拠である。
(forbes.com 原文)