欧州

2023.09.07 11:00

ウクライナ、ロシア国土の3分の1射程のミサイル開発中

ソ連時代のウクライナ・ドニプロにあったユージュマシュ社の工場(Antoine GYORI/Sygma via Getty Images)

ソ連時代のウクライナ・ドニプロにあったユージュマシュ社の工場(Antoine GYORI/Sygma via Getty Images)

1991年のソビエト連邦崩壊後、独立国となったウクライナは、自国の防衛の確立を急いだ。早急に立てた兵器開発計画の中には、米国のトマホークに匹敵する地上発射型の長距離巡航ミサイルの生産計画が含まれていた。1600km以上先の標的を攻撃できる自律型の精密兵器だ。

ユージュノエ設計局が進めていた「コルシュン」巡航ミサイル開発計画は、何ら成果を出すことはなかった。だがコルシュンを完成させるために必要とする技術や専門知識は、まだ存在している。ウクライナ国営企業ユージュマシュは直近では2018年にも、コルシュンの設計を積極的に宣伝していた。

そして今、ウクライナには、コルシュンをついに完成させなければならない理由がある。 19カ月に及ぶロシアとの戦争だ。

これは単なる臆測ではない。9月3日にウォロディミル・ゼレンスキー大統領に解任されたオレクシー・レズニコフ前国防相は、最近のインタビューで、ロシア領土の奥深くを攻撃するため、2000km先を狙える兵器が必要だと語った。この射程はロシア国土の東西の幅のおよそ3分の1に相当する。

ウクライナはそのような兵器を開発しているのかと尋ねられたレズニコフは「そうだ」と答えた。

ウクライナ軍はすでに、偵察無人機(ドローン)にジェットエンジンを搭載したり、古い地対空ミサイルを対地攻撃用に改良したりなど、有り合わせのものでさまざまな縦深攻撃兵器を開発し、国境から約400Km離れたロシアの空軍基地や司令部などを狙っている。

そうではなく、縦深攻撃用の巡航ミサイルがあれば、ウクライナ軍はずっと遠くの標的をより頻繁に、より正確に攻撃できるようになる。

もちろん、巡航ミサイルの性能はエンジンと誘導装置に左右される。ユージュマシュはコルシュンに、国内のエンジンメーカー、モトール・シーチが製造したR-95ターボエンジンを採用した。現在はMS-400と呼ばれるR-95は新しいものではなく、1980年代初めにはソ連のKh-55巡航ミサイルの初期モデルに搭載されていた。

だがR-95はコンパクトで効率がいい。推力は900ポンドあり、重量2トンのコルシュンを亜音速で1600Km以上飛ばすことができる。誘導機能ではユージュマシュは従来の慣性航法装置に衛星航法システムを組み合わせた。

同社がまだコルシュンを生産していない主な理由ははっきりしている。それは、資金面の問題だ。レズニコフは「巨額を投資する必要がある」と述べ、「もっと前にそうすべきだった」とも指摘した。

出遅れたとしても、何もしないよりはましだろう。ウクライナはようやくコルシュンや同様の縦深攻撃ミサイルを完成させるために金を注いでいるとみられる。完成して使えるようになれば、ウクライナ軍がロシア国内の標的を攻撃できる範囲は数百Km拡大するはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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