欧州

2023.09.11

ロシア軍の「水浸し」退却術、乗り越えるには架橋戦車がもっと必要

MT-55架橋戦車、橋部は未装着(AnBoris / Shutterstock.com)

ロシアが2022年2月にウクライナに対する戦争を拡大する前に、ウクライナ軍が架橋戦車(AVLB)を何両保有していたのかはよくわからない。戦争の拡大後、ウクライナが西側の支援国からそれを何両取得したのかなら、大まかにはわかっている。少なくとも45両である。これらは主にドイツと米国から供与された。ただ、西側の供与分を含め、ウクライナ軍の架橋戦車がこれまでにロシア軍に撃破されたのかどうかとなると、やはりよくわからない。

しかし、確かに言えることがある。ウクライナ軍にいま架橋戦車が何両あるにせよ、まったく足りていないということだ。6月、南部ザポリージャ州と東部ドネツク州の州境付近で重要な戦いを進めていたウクライナ軍の4個旅団は、それが理由で決定的な局面で攻撃の一時停止を余儀なくされた。ロシア軍部隊が小さな川の対岸に後退したあと、追撃しようにも利用できる架橋戦車がたった1両しかなかったのだ。

これは、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の最新の報告書でつまびらかにされた、ウクライナ軍の2023年の反転攻勢をめぐる驚くべき事実の1つである。アナリストのジャック・ワトリングとニック・レイノルズはそのなかで、ザポリージャ州の集落ノボダリウカと近隣にあるドネツク州の集落リウノピリをめぐる戦いを取りあげ、ウクライナ軍が6月4日にノボダリウカの外れなどで始めた反攻の重要なダイナミクスを浮き彫りにしている。

それは端的にいうとこういうことだ。ウクライナ軍の旅団は当初、戦車や戦闘車両、装甲トラックの長い縦隊でロシア軍の陣地を強襲しようとした。だが、軟弱な地盤や高密度の地雷原、精確な対戦車射撃に阻まれて失敗した。そのため、南部の主作戦軸では車両で直接急襲することは断念し、歩兵による低速で慎重な側面攻撃に切り替えた。

ノボダリウカ─リウノピリ区域でもそうだった。両集落の北に配置されたウクライナ軍の4個旅団(陸軍の第23、第32両機械化旅団と領土防衛隊の2個領土防衛旅団)は6月4日、ノボダリウカを直接攻撃する。工兵が地雷を除去して開いた細いレーンを、T-64戦車を先頭にマックスプロ装甲トラックが続く車列が進んでいった。

だが、トラックは途中で立ち往生してしまう。すると近くの樹林帯に潜んでいたロシア軍の戦車2両が砲撃をはじめ、ウクライナ側は後退を余儀なくされる。ウクライナ軍部隊は再び車両での直接攻撃を図るが、それも失敗する。そこで結局、徒歩でロシア軍陣地の側面に回り、そこから攻撃した。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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