小野: 1年ぐらいかけて約30クラブをリストアップして、現地視察をして10クラブぐらいに絞り、そこからスモールスタートでも始められる3クラブぐらいに絞りました。さらに課題を抱えていても、それを改善すればビジネスとしてまわっていけそうなところを探しました。
KMSKデインズは、フランスやオランダ、ドイツなど、いろいろな言語が入り混じる一方で、英語が公用語としてきっちりあるため、いろいろな国の選手が行き来しやすい。ベルギーリーグ自体、若手が活躍してステップアップしていくリーグだと判断しました。日本の選手を強くする一助になりたいと思っていたので、日本の選手やアジアの選手を送り込む場所としてベルギーは最適だという結果に行きつきました。
中道:去年、ワンシーズンやられてどうでしたか。
小野:大変でした。多くの方が1シーズンとか2シーズンでもうやめようと思う気持ちがよくわかります。赤字が大きく出るんです。他にもガバナンスの不都合、地元民との対話の難しさ、監督人事の重要性など、いろいろな問題が一気にのしかかってきました。よく生き延びてシーズンを終えたなという感じです。
中道:2部の中位くらいで終わったと思いますが、地元やファンの人たちはどんな反応ですか。
小野:デインズは、1部リーグ所属クラブを持つ大きな町に囲まれた、人口が5万人にも満たない小さな町です。強豪チームに囲まれているので、若手を含めた選手の獲得には苦労するところもありますけれど、KMSKデインズは2026年に100周年を迎える歴史あるクラブです。長い間アマチュアとして活動してきましたが、数年前にプロリーグの2部に入り、そのタイミングでオーナーのバトンタッチが行われました。
中道:プロになり、ここから這い上がっていくぞという町の人たちの期待を背負っているんですね。イングランドにいた時に、セミプロの小さなクラブでも小さいながらスタンドを持っていて、毎週そこに来てくれるファンの人たちがいて、クラブが町の人たちのコミュニティのド真ん中にあるという感じでした。
小野:たしかに町の中心であることには違いないのですが、ファンの高齢化が進む中でスタジアムにどうやってファンを呼び戻すかが課題になっています。勝敗の一喜一憂の影響が直に出ますから勝てないと相当きついんですけど、最後に勝って、来期に期待が持てる形でシーズンを終えることができたのでホッとしています。
中道:ヨーロッパのフットボールはオーナーがCEOみたいな形でファンの前に出て話題になることが多いですけど、小野さんのクラブはどうですか。
小野:僕らはガバナンスも含めてきっちりと組織体を整備したいので、CEOとは別にスポーツディレクターや、フィジカルコーチ、リカバリーコーチなどを新設しています。
中道:小野さんたちのような形でクラブに参画していくのは、ベルギーでは珍しいのでしょうか。