欧州

2023.09.02 08:30

装甲車で乗りつけ歩兵が飛び込む 「ウクライナ流」塹壕戦の戦い方

ロボティネから東へ100kmほどのモクリ・ヤリー川渓谷の前線で戦っているウクライナの海兵旅団は、ロシア軍に占領されていたマカリウカを強襲し、成功した。海兵隊員たちは戦車と装甲トラックの縦隊で塹壕線近くまで電撃的に移動し、塹壕から30m弱の場所で下車。そこから塹壕にまっしぐらに突入した。空挺軍部隊のマルダーは塹壕にもっと近づいていたようだ。

接近・迅速を旨とするウクライナ軍の塹壕掃討戦術を米軍の塹壕掃討戦術と比べると、後者のほうがはるかに慎重だ。米陸軍のフィールドマニュアル(FM、野外教範)7-7によれば、塹壕への突撃にあたってはまず「小隊が展開し、火力基盤を構築する」。そして「小隊長は、塹壕線に機動して突撃するのに十分な戦闘力があるか判断する」。

小隊の一部は塹壕から少し離れた場所(数百m離れていることも珍しくない)に陣取り、部隊のM2歩兵戦闘車とともに制圧射撃を行う。突撃隊が前方に飛び出し、煙幕のなかを掩蔽(えんぺい)部から掩蔽部へと素早く移動する。

野外教範によれば「突撃射撃隊の(中略)兵士2名がまず、塹壕の端に移動する。(両名は)塹壕と平行に仰向けになり、分隊長の命令で手りゅう弾をクックオフ(信管を作動させること。最大2秒)し、『フラッグ・アウト(投げるぞ)!』と声を張り上げて塹壕に手榴弾を投げ込む」

「どちらの手りゅう弾も爆発したのを確認した後、両兵士は塹壕に転がり込んで足から着地し、背中合わせになる。そして塹壕の中でそれぞれ反対の方向に射撃する」。続いて突撃隊の隊員がさらに転がり込んでいき、塹壕戦が始まる。

米兵が塹壕からかなり離れたところで下車し、慎重に躍進距離をとりつつ、場合によってはほふくして突撃に向かうのに対して、ウクライナ兵は車両で一気に近づき、塹壕に直接飛び込む。体はずっと起こしたままだ。

ウクライナ軍のやり方がうまくいっているのは議論の余地がない。ウクライナ軍部隊はロボティネ周辺、モクリ・ヤリー川沿い、さらに東のバフムート周辺という少なくとも3つの軸で、ロシア軍が設けた塹壕の制圧を着実に進めてきている。

戦闘車両で塹壕近くまで行くために、操縦士はたまに車輪を塹壕に落としてしまうことがあるのだろう。この場合、装甲回収車による救出を待つことになる。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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