欧州

2023.09.02 08:30

装甲車で乗りつけ歩兵が飛び込む 「ウクライナ流」塹壕戦の戦い方

遠藤宗生

2022年2月22日、ウクライナ東部ドネツク州の塹壕を歩くウクライナ兵(Getty Images)

ウクライナ軍はロシアによる全面侵攻後、19カ月にわたって激戦を繰り広げるなかで、ロシア軍が掘った塹壕(ざんごう)に対する突撃や掃討、制圧に熟達してきた。

その戦術では速度と攻撃性が肝だ。装甲トラックや歩兵戦闘車が走行間射撃を行いながら高速で前進し、敵の塹壕のわずか数m手前で停止する。

そして歩兵を降ろす。歩兵は1秒も無駄にせず、塹壕の中に直接飛び込む。そして互いに声を掛け合って連携を取りつつ、躍進したり手りゅう弾を投げたりして掃討を開始する。

敵の不意をつき、衝撃を与える効果があるこの戦法は、ウクライナ軍が6月に南部と東部の複数の軸で開始した反転攻勢で駆使され、目を引いてきた。

ただ、南部ザポリージャ州の集落ロボティネ周辺で最近撮影された動画が示すように、ときにはしくじりもあるようだ。南部の都市メリトポリに続くルートでロシア軍の重要な拠点だったロボティネはその後、陸軍の第47機械化旅団と空中機動軍(空挺軍)の第82空中強襲旅団が解放している。

第82空中強襲旅団の兵士らは英国供与のチャレンジャー2戦車、米国製のストライカー装甲車、ドイツ供与のマルダー歩兵戦闘車といった強力な車両に乗り込んでいる。しかし今月22日かそれ以前に、重さ31トン・乗員9名のマルダー1両が、ロシア軍の塹壕とみられるくぼみに落ち込み、動けなくなってしまった。

同旅団による塹壕制圧後にウクライナ兵が撮影して投稿したとみられる動画には、装輪の片側が壕にはまって浮いたようになり、立ち往生しているマルダーの姿が映っている。突撃部隊の車両と思しきマルダーは、塹壕に少々近づきすぎたと見受けられる。

マルダーがロシア軍の塹壕に落下するほど接近したとみられる状況は、第82空中強襲旅団の攻撃性を物語っている。こうした攻撃性はウクライナ軍の機械化歩兵部隊、なかでも海兵隊と空挺軍の機械化歩兵部隊の特徴だ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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