重量1トンのネプチューンが地上の標的を攻撃できることは驚くにあたらない。ウクライナのルチ設計局は、ロシアの対艦ミサイルKh-35をモデルにしてネプチューンを設計した。米国の対艦ミサイル、ハープーンを意識して設計されたKh-35も、対地攻撃モードを備えている。
ロシア軍がウクライナ南部クリミア半島に侵攻してから2年後の2016年、ロシア空軍は同半島西部のタルクハンクト岬にS-400地対空ミサイルシステムを配備した。S-400をポッドレットK1レーダーと併せて使うと約400km先の航空機やミサイルを探知して攻撃でき、オデーサ港以西の黒海をカバーできる。
S-400やポドレットレーダー、そしてバスチオン対艦巡航ミサイルシステムなどタルクハンクト岬にある兵器は、ウクライナが今年、長距離攻撃能力を拡大して以来、攻撃対象の主な候補となっていた。
ロシア軍を遠くから攻撃するため、ウクライナはハープーンに加え、英国のストームシャドーやフランスのスカルプといった空中発射式の巡航ミサイルを獲得した。
同時にウクライナは、空軍が対地攻撃用に改良した地上発射の防空ミサイルS-200などの遠距離攻撃兵器を開発。海軍も、2022年4月にロシア海軍の巡洋艦モスクワを撃沈したことで知られるネプチューンに同様の改良を加えた。
亜音速で低空飛行するネプチューンは、Kh-35やハープーンと同じように対地攻撃に適している。米ボーイングは1990年代後半、第1世代では対艦モードのみだったハープーンに対地攻撃モードを持たせるため、次世代モデル「ブロックII」のレーダーシーカー(目標捜索装置)にGPS補強型慣性航法装置を追加した。
船舶は周囲の平らな水面よりレーダー信号をはっきり反射するため、船舶を攻撃するにはレーダーシーカーだけで十分だ。これに対し、地上の標的は建物や木々、起伏のある地形に囲まれている。だが、レーダー誘導ミサイルにGPSを搭載すれば、複雑な地形も識別してミサイルを誘導できる可能性が高まる。