欧州

2023.08.25 10:30

ウクライナ、ロシアの主要ミサイル基地を爆破 クリミアへの攻勢強める

ベラルーシの軍事演習場に到着したロシア製のS-400地対空ミサイルシステム(Russian Defense Ministry / Handout/Anadolu Agency via Getty Images)

ベラルーシの軍事演習場に到着したロシア製のS-400地対空ミサイルシステム(Russian Defense Ministry / Handout/Anadolu Agency via Getty Images)

ロシア軍は、2014年2月にウクライナ南部のクリミア半島を併合した後、クリミア西部のタルクハンクト岬に大規模なミサイル基地を設置した。

ロシア軍はその基地に、S-400地対空ミサイルシステムやバスチオン対艦巡航ミサイルシステム、そしてポッドレットK1など一連のレーダーを配備した。

ポッドレットを活用すればS-400システムは約400km先の空中の標的を狙うことができ、黒海西部全域をカバーする。一方、バスチオンは300kmほど離れた艦船を攻撃でき、陸上の標的を狙うことも可能だ。

タルクハンクト岬は、黒海とクリミア全域のロシアの防衛の要と言っても過言ではない。ウクライナ軍が23日にこの基地を爆破したのは、そのためだ。

何が起こったのか、正確なところは不明だ。現地時間23日午前10時ごろ、一連の爆発が基地を揺るがしたことはわかっている。ウクライナ空軍が巡航ミサイルのストームシャドーあるいはS200弾道ミサイルで基地を攻撃したというのは十分あり得る。また、ドローン(無人機)や工作員が攻撃を実行した可能性もある。

ロシアの占領に伴って追放されたマリウポリ市長の顧問を務めるペトロ・アンドリュシチェンコは、バスチオンが攻撃を受けたと主張。ウクライナの情報総局は、S-400システムとその要員が全滅したとの見解を示した。また、クリミアに配備されているポドレットK1などの大型レーダーが攻撃を免れたとは考えにくい。

情報総局は「ロシアの防空システムにとって手痛い打撃であり、クリミアにおける今後の展開に深刻な影響を与えるだろう」と指摘した

開始から2カ月半がたつウクライナ軍の反転攻勢の目的は、ロシアに占領されているウクライナ南部の黒海まで約80km前進すること。そしてロシアとクリミアをつなぐ陸上のルートを断ち、クリミアに展開するロシア軍の補給を、攻撃を受けやすい船舶や航空機頼みにさせることだ。

クリミアを孤立させることで、そこに駐留するロシア軍を物資不足に追い込み、最終的なクリミア解放に向けて有利な条件を整えられる。ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防相は「戦わずに」クリミアを解放するのが理想だと語っている。

だがそれは、ロシア軍の駐屯地を事実上封鎖したときのみ実現する。封鎖すればクリミアに配備されている空と海の防衛が遮断される。重要なミサイルやレーダーの基地が破壊されれば、封鎖はより現実的になる。

クリミアにあるロシア軍基地へのウクライナ軍の攻撃はエスカレートしている。海からは爆発物を積んだ無人艇がロシア海軍基地に群がり、空からはドローンやストームシャドー、S200がロシア空軍基地や兵站施設、橋をめがけて飛んでくる。

ウクライナ軍のドローンやミサイルの標的であるロシア軍の空と海の防衛が崩れるにつれ、攻撃はさらにエスカレートすることが予想される。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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