4個ある海兵旅団のすべてがモクリ・ヤリー川沿いに展開しており、その兵力は総勢ざっと8000人だ。ウクライナ軍がこの攻勢軸で大きな突破を成し遂げれば、決定的な戦力になるだろう。
だが、ウクライナ軍が南部方面で待望の反転攻勢を始めてから2カ月たつなか、精鋭の海兵旅団をすべて同時に展開させたことには、大きなリスクもともなう。
ウクライナ軍の戦闘序列において、海兵隊は、同じく独立した軍種である空中機動軍(空挺軍)や、最も経験豊富で装備も充実した数個の陸軍旅団と並び、最も強力な攻撃戦力に位置づけられる。とはいえ、どんな旅団も、休養や装備の修理、兵士の補充のために短期の休暇を挟まなければ、戦い続けることはできない。
つまり、これらの海兵隊もいずれ接触線から引き下げる必要が出てくる。そうなると、その空白をより戦闘力の低い部隊で埋めなくてはならなくなるかもしれない。この入れ替えはロシア側にとって反撃の好機になる。
ウクライナ海兵隊は5月に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の命令によって独立した軍種になった。ゼレンスキーは海兵隊について「敵を壊滅させ、ウクライナの国土を解放し、最も困難な状況で最も困難な任務を遂行する強力な戦力だ。わたしたちはこの戦力をもっと必要としている」と述べている。
ロシアがウクライナ侵攻を始めた2014年(まず南部クリミア半島を強奪し、次に東部ドンバス地方を攻撃した)以前には、ウクライナ軍に海兵旅団は1個しかなかった。海軍に属していた第37海兵旅団である。
その後、戦争がエスカレートするなか、新たな海兵旅団が編制される。2015年に第36海兵旅団、2018年に第35海兵旅団が設立され、今年春には最新の第38海兵旅団がつくられた。第38海兵旅団は7月25日ごろ、南部前線到着のあいさつ代わりとばかりにロシア空軍のKa-52攻撃ヘリを撃墜し、鮮烈なデビューを飾っている。