G7でも宣言された、教育現場でのウェルビーイング
後半は、これからの未来を担う若い世代のウェルビーイングの捉え方について。谷本編集長が教鞭をふるう大学に於いて、以前は、学生からの質問で、「SDGsが進んでいる会社はどこですか?」から、「ウェルビーイングを実践している会社を教えて欲しい」に変わってきたという。教育現場でさえ、ウェルビーイングへの切実な意識の高さが浸透してきているのだ。谷本:そこで矢野さんに2つ伺いたいのですが。1つ目は、ウェルビーイングな会社の見極め方。2つ目は、教育の中でウェルビーイングをどのように取り入れて学んでいったらいいのか?です。
矢野:ゆるい事や、ぬるい事をウェルビーイングと捉えている企業は、だめだと思います。筋肉も鍛えないと脂肪に変わってしまうように、人生も試練を乗り越えた時に本当の喜びが得られる。でも、そもそもウェルビーイングな会社に入社したいと考える学生さんには、「楽をしたいから入社したいと考えているなら間違いですよ」と助言してあげたい。
若いうちからウェルビーイングを意識するのは、とても大切な事です。先日のG7の会合で、「子供のうちからウェルビーイングを取り入れよ」と宣言されたばかりです。身近では、自分の子供や地域を通してサポートしていく事が重要。あるデータでは、休み時間に「三角形」をつくれている小学生が、偏差値が向上するという結果が出ています。つまり、いい人間関係が出来ていると、結果が出るという結論に導かれたわけです。
世界を席巻するビジネスは、日本文化とテクノロジーとの融合
成熟すればするほど、目に見えないものが大切になってくると言われている。従来、定量化出来なかった人間関係をテクノロジーで客観的に数値化する事は、様々な方面からのモニタリングが実践出来て、会社の実績までも左右する物差しになってきた。谷本:今やどの企業もエンゲージメント・サーベイが行われていますが、どの会社も上手く使えていない印象を受けます。こういったデータは、どのように活かしていったら有効なのでしょうか?
矢野:ここ数カ月でガラッと変わったと思います。そもそも、こういった調査は、年に一回行われる事が多いのですが、日々組織がめまぐるしく動いている現実に対して年に一度では、圧倒的に少な過ぎる。極めて前時代的だな、と。人材を見る時、その人がどんな言葉を使っているか?で、その人物を理解出来る。自然言語のデータを解釈し活用する能力が、ChatGPTの台頭によって、それ以前とは異次元に向上しているので、この活用には大きな可能性があると思います。
谷本:ここで、ChatGPTのお話が出てきましたが、AIの先に見える未来。人とどのように共存しながら事業形成をしていったらいいか? お聞かせ下さいますか。
矢野:この分野は、1時間でも2時間でも語れます(笑)。AIを使いこなせると、人の能力がものすごく拡張されます。我の会社では、コンピューター・ソフトウエアを開発しているのですが、既にChatGPTを活用しています。
「今こういうものを作りたい」と入力すると、ソースプログラムが瞬時に出てくる。内容が今ひとつ理解出来ない場合、「解説して」と再入力すると、一瞬で解説してくれる。ChatGPTを使えば、自分のできることが広がります。例えば、ある時私はPythonで計算した結果を、WEBアプリに表示したいと思いました。以前なら誰かに頼まなければできない仕事でしたが、ChatGPTを使ったら自分でできました。