経営・戦略

2023.08.04 16:30

「幸せでないと利益が出ない時代」 のウェルビーイングの高め方

私が40年前、日立に入社した時には、社員旅行や部活や寮生活など、用事のないイベントが沢山存在していましたが、今は全くなくなりました。スポーツの世界では、チームワークや努力の先に、応援がありますが、ビジネスでは、応援がない。皆さん、仕事場で誰かを応援していますか? 応援は、する側もされる側も前向きな意識を高めるのです。そこで、応援の敷居を下げて日々実践できるアプリを作ったのです。

仕組みは簡単。10人くらいの小さな部屋をアプリ上に作ります。その中で3人組をアサインして、自分以外の2人を応援する。すると先程お話しした「三角形」が形成されるわけです。10人組も2カ月に一度組み替えます。仕事をしていれば時には、クライアントからクレームを受けたり、上司から叱咤されたり。だからこそ、皆で焚き火を囲んで語り合えるような関係性が必要なのです。

幸せが利益を生み出し、利益が幸せを導く

現代社会において、希薄になった横の繋がりを構築するシステムを展開している矢野CEOだが、今のデジタルは、用事を効率よく進める為のツールでしかないという。逆の発想力で、用事のない人同士をフラットに繋げて離職やメンタルの問題を解決していくアプリ「ハピネスプラネット」は、サービス開始から、金融やアパレルから製造業や医療の世界まで、100社を超える企業が導入している。

矢野:「ハピネスプラネット」のアプリを使った方を対象に、3週間83社4300人に調査を行なった結果、前向きさが明確に向上する結果がでました。営業組織では「三角形」を作った事で離職率が半分に下がりました。また、将来を担う若手社員が横の繋がりを強化した事で、資格者試験の平均点が10点上がったというデータも。つまり、ITは、便利なツールだけではなくて、人間や組織に活用すれば、会社運営で有効に作用する知見が得られたのです。幸せが利益を生み出し、利益が幸せへと導いてくれる。社会も企業も地域作りも、全て人で成り立っています。だから、人は、心次第でもっともっと高められる事が実証されました。
(写真:日本経営合理化協会)

(写真:日本経営合理化協会)


谷本:沢山のヒントが詰まったお話をありがとうございました。ここからは、会場の皆様に代わって質問をしていきたいと思います。リモート時代に於いて、「三角形」が作りにくくなっている現在、「三角形」を作るノウハウについて、教えていただけますか?

矢野:「三角形」を作る前に、大前提であるのは、「三角形」が大事だよ、と皆に認識してもらう事です。次に「三角形」を作るにはどうしたらいいかを全員で議論してもらう。そこで出た話によって、どういうツールがいいかが見えてきます。働き方や企業文化などは、それぞれ違うので、試行錯誤してみて下さい。私達のアプリを活用するだけではなく、偶有性がある形でランチを摂るシャッフル・ランチを導入するのも、有効な方法なのではないでしょうか。
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インタビュアー=谷本有香(Forbes JAPAN執行役員・Web編集長) 文=中村麻美

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