富山の地銀が開示 ストーリー性のある「人的資本」の中身

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ビジネスパーソンがここ最近よく聞く単語のひとつは、「人的資本」でしょう。人は使い捨ての資源 (Human Resources) ではなく、企業価値を高める重要な資本 (Human Capital))という考えが広まっています。日本企業の生産性の低さは、人や組織の問題であると喝破する海外投資家もいます。

上場企業では、2023年6月提出分の有価証券報告書(有報)から人的資本に関する開示が義務化され、東証は人材育成や社内環境整備に関する方針、指標・目標を明記するよう求めています。この人的資本経営においても、ナラティブ(ある視点を持つストーリー)は鍵となります。

2300社が「人的資本」開示 好例の多くは1兆円企業

これまでに2300社以上の企業が有報での人的資本に関する開示を行いました。このうち筆者が約150社を見てみたところ、多くの企業が事業戦略との関連を欠いており、残念ながらまとまりのない印象を与えています。

たとえば、将来の戦略を記述する部分では、「ITやグローバルなど注力すべき事業領域での人材の育成や確保が必要」と謳っているにもかかわらず、人材関連の目標では、女性管理職指標のみに焦点を当てている事例などです。ジェンダーギャップは、日本企業の大きな課題で、開示の増加そのものはとても喜ばしいことです。しかし、経営としては女性活躍関連の指標以外にも多くのウォッチすべき人事指標があるはずです。

一方で、素晴らしいナラティブを持って人的資本開示を行った企業も何社もあります。その多くは、以前から統合報告書などで、自発的に非財務情報を対外的に説明してきた時価総額が1兆円以上ある大企業ですが、そこまで時価総額が大きくない企業の例を紹介しましょう

富山に本社を置く、時価総額1000億円強の「ほくほくフィナンシャルホールディングス」(北陸銀行と北海道銀行を傘下に持つ)の人的資本開示は、ナラティブのある良い例だと感じました。
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文=市川祐子 編集=露原直人

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