CEOs

2023.06.28 17:00

CHROが語る「人と経営」の神髄。人は「自己増殖する資本」である

「これからの働き方・組織」論のなかでも、大きな転換期にあるのが大企業だ。変革を主導するCHRO(最高人事責任者)たちはいま、何を考えているのか。

人を最重要の資本ととらえる「人的資本経営」が経営における最注目のキーワードとなり、かつ、進化の過程にあるのがいまだ。「強い経営」に必要な経営戦略と人材戦略の連動を生むために、CHRO(最高人事責任者)は、CEOらとともにこれからの組織や働き方をどう考えるべきか。

アサヒグループホールディングスのCHROを務める谷村圭造、IHIの人事部長、人事・労働関連事項担当常務執行役員の瀬尾明洋、『ワールドクラスの経営』の共著者で、日本CHRO協会シニア・エグゼクティブの日置圭介の3人に、現在地と未来を聞いた。


日置圭介(以下、日置):おふたりの共通点は経営の観点から人事をとらえられる「人事っぽくないCHRO」という点です。だからこそ「そもそもCHROとは何か。人事とは何か」という本質から議論できるのではないか、と考えています。まず、人事の専門性は、いま、どこにあると考えますか。

谷村圭造(以下、谷村):組織人事を行うのは、人事部門だけではありません。CEOはもちろん、人事部門以外でも人事業務を行っています。では、人事部門は、どこで価値を出すのでしょうか。私はふたつの方向性があると考えています。ひとつは、人事制度の運用を極めていく「オペレーション・エクセレンス」。もうひとつは、「人事ではなく、人でみる」という観点で挑むこと。いわゆる人間理解のアプローチです。
谷村圭造

谷村圭造


日置:「HRの本分は制度ではなく、人をみること」と私も拙著で述べました。ただ近年、人事部門は、人事制度の策定・運用などのオペレーションに注力し、その範囲での専門性を突き詰めてきました。もちろん、これは一概に悪いというわけではありません。例えば、組織内に散らばるHRリソースを横断的に集約する「CoE(センターオブエクセレンス)」のような機能も重要です。ただ、変化の激しい時代のなか、これまで人事部が培ってきた専門性だけでは対応できないことも多い。制度という専門性をうまくハンドリングしながら、ほかの分野からの知も取り入れ、専門性の再定義を図る。そのバランス感が重要ではないか、と思います。

瀬尾明洋(以下、瀬尾):私は経営企画や新規事業の立ち上げなどの経験を経てCHROになりました。私の人事の専門性における仮説は「チーム組成の提案力」です。「働く人たちが面白いと思い、組織としてパフォーマンスを発揮するためには、どんな人たちでチームを組成すべきか。その提案を、チームを通して組織し、個人に波及するダイナミズムをまで計算して実行できる。それこそ、新しいリーダーシップのたちであり、「人でみる」プロフェッショナルとして磨くべき専門性だと思いますね。
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