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2023.06.28 17:00

CHROが語る「人と経営」の神髄。人は「自己増殖する資本」である

Forbes JAPAN編集部
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谷村:当社では、21年3月に「学び、成長し、そして共にやり遂げる」と題した、新しいグループ人事基本方針「ピープルステートメント」を策定しました。我々が目指す働き方を明文化して、4つの柱「セーフティ&ウエルビーイング」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」「学習する組織」「コラボレーション」も立てました。

キーワードとして掲げたのは「人的資本の高度化」です。ここに注力すれば、結果、社員と企業は双方で成長し、エンゲージメントも高まる。問題は、「人的資本」がどのようになれば、「高度化」したことになるのか、という点です。策定時点では、無理な定義はしませんでしたが、今年からは「ゴールになりうる表現」に落とし込み、「アクションプラン」「KPI(重要業績評価指標)」をしっかりつくっていきたいですね。経営は数字で語れないといけませんが、人事には数字では表せない部分もあります。数字で語れるところは数字で語り、難しいところは定性的に表現をしていきたいと考えています。

日置:ファイナンスだと、人を数字にすると「頭数」「コスト」という見方になってしまいがちですからね。
日置圭介

日置圭介


瀬尾:人事にとっての数字は「解釈」、そして「タイミング」によって意味付けが変わります。同じ指標でも、人事としての解釈があり、そこから次の戦略が生まれている。例えば、女性役員比率など、現状の数字に一喜一憂するのではなく、その数字が何をもたらそうとしているのかを人事なりに読み取って、次の動きを考えるべきだと思っています。

日置:おふたりに共通しているのは、KPIづくりは、定性的な「人間理解」から始めるという点です。その「人間理解」の積み重なりの一部がデータとなり定量的な分析につながる。そこから、組織のコンテクストを踏まえて、KPIを設定するという流れですね。この際に大切なのは、「幅」をもたせること。KPIはあくまで指標としてモニタリングし、成果には「揺らぎ」があってもいい。一定の幅のなかでマネジメントすべきだと思います。

鼎談で出た「人は自己増殖する資本」という言葉は、人の可能性を信じて奮闘するおふたりのスタンスをよく表し、企業経営の鍵になる言葉です。一方で、人は不完全で弱い。このことを直視し、人が臨界点を突破する成長の場をつくっていくには、会社の枠をも超えて、人を知り、発掘し、つなぎ、そして統合しなければなりません。型におさまらないCHROたちの振る舞いがそれを実現するのだとあらためて思いました。


谷村圭造◎アサヒグループホールディングス取締役 兼 執行役員 CHRO。1989年同社入社。2014年人事部門ゼネラルマネジャーに就任、18年、執行役員グローカルタレントマネジメント担当を経て、19年に取締役兼執行役員、20年より現職。

瀬尾明洋◎IHI取締役常務執行委員 人事部長。1987年、石川島播磨重工業(現IHI)入社。人事・労務管理、組織開発などに従事。2006年ロシアでの自動車部品製造のJVを新事業として立ち上げ、6年間社長。グローバル統括本部、新事業推進部長などを経て、18年から現職。

日置圭介◎日本CHRO協会/日本CFO協会シニア・エグゼクティブ。税理士事務所勤務、英国留学を経て、PwC、IBM、デロイト、BCGにてコンサルティングに従事。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科兼任講師。共著『ワールドクラスの経営』(ダイヤモンド社)ほか。

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