事業継承

2023.06.05

地域繁栄の裏に名家あり! 経済と文化の原動力「日本の名家50選」

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名家とは何か。今回、6人の専門家と選定しながら、3代以上にわたり家業が続いていることを条件の一つとした。すると、名家として生き残る共通解が見えてきた。

現代風の企業経営に例えると、「ステークホルダー資本主義」だ。地域に雇用を提供し、地域経済の発展に寄与する。「地域を発展させずして名家の繁栄なし」だ。ただし地域住民とコミュニティを形成したからといって持続するわけではない。三井家の家訓「鉱山は買うな(当たり外れが多いから。山師の語源)」を当時の番頭がそれを無視したことでいまの「資源の三井」を切り拓いたという。ビジネスモデル転換や海外進出、適切な後継者選びといった動きを柔軟にできる名家が危機を乗り越えているのだ。

名家のカテゴリーについて、歴史系は、旧華族につながる家系や国策に関わった家を挙げた。地主系は、庄屋や豪農をルーツとし広大な不動産を所有する家。工業系は近代的工業化に成功し業界TOP3以内に上り詰めた企業などを挙げた。老舗系は江戸時代以前より商いを行う呉服商や酒造業、しょうゆ醸造業などが該当する。文化系ではその文化を広めるために技を伝承する形で維持してきた家を挙げた。

ADVISORY BOARD アドバイザリーボード

森岡 浩
姓氏研究家
早稲田大学政治経済学部卒業。日本人の名字について歴史学や地名学、民俗学等から多角的に研究、著作・監修活動を行う。2017年からNHK「日本人のおなまえ」にレギュラー出演。著書に『名字でたどる日本の名家』『日本名門・名家大辞典』等多数。

八幡和郎
評論家、歴史家、徳島文理大学教授
東京大学法学部を経て、1975年に通商産業省入省。フランス国立行政学院(ENA)に留学ののち、国土庁長官官房参事官、官房情報管理課長などを歴任、97年に退官。著書に『日本の政治「解体新書」』(小学館新書)等多数。

國貞文隆
ジャーナリスト、文筆家
学習院大学卒業後、東洋経済新報社記者を経てコンデナスト・ジャパン『GQ』でビジネス・政治記事等を担当。明治〜昭和期の実業家、企業の歴史に詳しく、著書に『慶應の人脈力』『社長の勉強法』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』等。

後藤俊夫
日本経済大学大学院 特任教授
東京大学経済学部卒業後、NEC入社。1974年ハーバード大学ビジネススクールにてMBAを取得。国民経済研究協会、静岡産業大学教授等を経て、2015年、一般社団法人100年経営研究機構を設立。ファミリービジネスの長寿研究を行う。

高梨一郎
ファミリービジネスネットワークジャパン理事長
大学卒業後、叔父の創業した東京コカ・コーラボトリング(現、コカ・コーラボトラーズジャパン)及び、丸仁ホールディングスで勤務。2002年に国際組織の日本法人である、NPO法人ファミリービジネスネットワークジャパンを設立。

菊地浩之
経済史学者、歴史家
國學院大学卒業。ソフト会社勤務の傍ら、論文・著作を発表。2005年〜06年、明治学院大学非常勤講師に。06年國學院大学経済学博士号を取得。著書に『日本の地方財閥30家』『日本のエリート家系 100家の系図を繋げてみました』等多数。


歴史系 徳川宗家

都道府県 東京
主な収入源 徳川記念財団など
創業年 ─

始祖の家康による五街道整備など、徳川家は現代のインフラにつながる陸海交通網と宿場町を築いた。また土地の開墾と埋め立てによる新田開発で新作物の栽培も行い、農業の生産性向上に貢献。現在の徳川家は徳川記念財団を運営し、歴史資料や文化財を管理。若手の近世研究者の支援を行う。2023年、翻訳家の徳川家広が19代当主を継承して話題に。
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文=堤美佳子、田野早希子 イラストレーション=スタジオ・ムティ

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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