経営・戦略

2023.08.04 16:30

「幸せでないと利益が出ない時代」 のウェルビーイングの高め方

谷本 有香

(写真:日本経営合理化協会)

予測不能なこの時代の、企業と社長の生き方探求。ビッグデータが明かす人間組織の法則では、どのようにしたら人は、幸福になる事が出来るのだろうか? そして、その先に広がる未来と社会は、どういった世界なのだろうか?

日立製作所 フェロー兼 ハピネスプラネット 代表取締役の矢野和男CEOに、Forbes JAPAN 執行役員 谷本有香 Web編集長が斬り込む。


ウェルビーイングが重視されてきた背景

「ハピネスプラネット」は、矢野和男がフェローを務める、日立製作所ほかが出資して設立されたITベンチャー企業。働く人を幸せにして、生産性を向上させる組織作りの貢献を目的としたアプリ「ハピネスプラネット」を提供している。

人材が課題となっている時代、従業員ひとりひとりの働き方を前向きにさせるアプリとして、各界で注目を集める。仕事前に開くアプリで、その日のお題に対して20文字以上でコメントすると、3人1組の仲間から応援メッセージが届くシステム。会社の経営利益さえ上げるという、驚くべき新しい形のウェルビーイング・ツールだ。

谷本有香(以下、谷本コロナとChatGPTの出現が、大きく私達の生活を変えたわけですが、矢野さんといえば、「ウェルビーイング」という言葉が生まれる前から、幸福を研究されていた第一人者。なぜ今、「ウェルビーイング」や「幸せ」が、経営者の中で話題にのぼるようになったのだと思われますか?
(写真:日本経営合理化協会)

(写真:日本経営合理化協会)


矢野和男(以下、矢野):私自身の経験をお話させていただきますと、日立製作所に入社以来、ずっと半導体の研究開発を担当しておりました。日本も日立も半導体が強い時代でした。ところが、今から20年前の44歳の時、日立が半導体事業を撤退する事になったのです。自分にとっては衝撃的かつ青天の霹靂。それまで培ってきた人脈やスキルを一度リセットせざるを得ない事態に陥ったのです。

そこで、「困ったな。何か新しい事を始めなくちゃ」と思った時、「コンピューターは、今後伸びていく産業だろう。しかし、データの方が重要になる時代が来るのではないか」と考えたのです。データの使い方こそ必要だと。

私は経営学者のピーター・ドラッカーを愛読していたのですが、彼曰く「20世紀最大の偉業は、肉体労働における生産性を50倍高めたことである。21世紀における最大の偉業は、知識労働の生産性を同様に上げることである」と言ったのです。つまり、人間の「生産性を上げる」為に役立つツールが大切だと。

昭和の時代は、冷蔵庫や洗濯機や車など、大量生産した商品を作りさえすれば、需要が口を広げて待っていました。ところが、今は全く違います。技術の変化も桁違いに起きている。この変化と向き合う時、ひとりひとりが「前向き」でなければいけない。これが「ウェルビーイング」が重視されてきた背景だと分析しています。幸せとは、単に楽な方面へ流れるのではなく、「前向き」と一体化されたものだと考えます。
(写真:日本経営合理化協会)

(写真:日本経営合理化協会)


谷本:「ウェルビーイング」が、世界的なテーマとなった現在、日本人は、幸福を感じにくいと言われていたりしますが、矢野さんのご見解は?

矢野:国や国民性は、マクロには平均値が違ったりするかも知れませんが、圧倒的に違うのは、実は個人差にあります。個人の性格は、それぞれが宇宙の端から端の距離ほどに違う。昭和の時代は、終身雇用で標準化した流れで生きてこれましたが、今は、個人の時代なので、ここで認識を新たにスイッチしないといけません。

谷本:では、ここからは、この会場にいらっしゃる経営者の皆様に向けて、社員の士気を高め、これからどのように時代背景を理解して幸せ感を上げて組織運営していけばいいのか?について、ご講演をお願い致します。
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インタビュアー=谷本有香(Forbes JAPAN執行役員・Web編集長) 文=中村麻美

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