谷本:日本が世界を席巻していく社会を思い描いた時。言語化出来るものより、「侘び寂び」や「滋味深さ」といった、言語化出来ないものを日本の強みにすれば、世界に勝てるかも知れないと思うのですが。よりよい形で日本発のビジネスを形成していく術を、どのように考えていらっしゃいますか?
矢野:まさにその通りだと思います。先日、スティーブ・ジョブズの特集をNHKで放映していたのですが、アップル社でiPhoneやiPadなどの革命的プロダクトを作り、潰れかけた会社を世界最大の会社に生まれ変わらせた彼を突き動かしていたのが、日本のカルチャーだったという内容。日本の陶器の丸みを帯びた優しさをiPodやiMacのヒントにしたり、日本の職人のエッセンスをインテグレートして製品に込めていたのです。このように、世界に誇れる日本文化を大事にする。普遍的に存在している日本文化をテクノロジーと掛け合わせて、新しいビジネスを生み出していったら、最強になるのではないでしょうか。
谷本:残り時間も迫って参りました。激動し混沌としたこの時代、幸せへの定義が様々に語られていますが、最後に、矢野さんがこれだけは伝えたいという言葉がありましたら、お願い致します。
矢野:GDPは、企業の生み出している付加価値(粗利)を集計したものですが、例えば、車が壊れて新車を購入しても、人と人がいがみあって訴訟を起こしても、GDPは増えます。一方、GDPにカウントされない事で大切なものは沢山あります。いい人間関係や家族の繋がりなど。それらは、1円もGDPにカウントされないけれど、私達に幸せをもたらしてくれる。だからGDPで計る事が不可能な「三角形がどのくらいあるのか?」が重要なのです。
私は、ジャーマン・シェパードという犬を飼っているのですが、散歩中、知らない方と立ち話をするようになりました(笑)。これは、60年近く生きてきて、初めての事。犬を媒体にして人生相談までされる事もあり、こういう関係って心が温まる。こんなコミュニケーションが、会社や地域でも増えて欲しいと考えました。企業がコミュニティの受け皿になっていた時代がありましたが、今はなくなったので、再びこういうコミュニティを形成していく社会を目指したいと思っています。
谷本:これまで、資本の重要性は充分理解してきましたが、これからは、GDPに変わるかも知れない、GDT=グロス・ドメスティック・トライアングルを私達自身で作っていかないといけないと、改めて認識しました。そんな時、「ハピネスプラネット」さんのアプリを使ったなら、ショートカットして、職場や社会が幸せへと導かれるのかも知れませんね。本日は、貴重なお話を沢山ありがとうございました。