代替タンパク質のシンクタンクGood Food Institute APACのミルテ・ゴスカーによると、シンガポールや中国のようなアジア諸国 では、深刻な食糧の安全保障上のリスクが気候変動への懸念を上回り、代替タンパク質への関心を高めているという。「より安全で、持続可能で、公正な食糧システムを構築することは、アジアでは単なる選択肢ではない。従来型の畜産は、急増するタンパク質需要、土地と水の不足、ウイルス発生の脅威といった課題に対処する能力がない」と彼は語る。
国連の推計によれば、世界人口は80億人を超えており、世界の食糧システムは2050年までに推定97億人を賄う必要がある。昨年来の地政学的要因も食料安全保障に打撃を与えている。ロシアのウクライナ侵攻(両国は世界の穀倉地帯の1つを構成している)は、ヒマワリ油と小麦の輸出に打撃を与えた。
枯渇するVCマネー
一方、ベンチャーキャピタルの投資が減少する中で、昨年からアグリテックとフードテックに流入する資金も減っている。アグリテックの投資会社のAgFunderとテマセクが3月に発表したレポートによると、2022年にアグリテックとフードテックの新興企業に対する世界の投資額は、前年の517億ドルから44%減の296億ドルに激減した。インは、今後数年間で変革が必要とされる重要な分野が教育だと指摘する。フードテックやアグリテックの分野では起業家やイノベーションが必要とされているが、学生はこの分野に興味を持たないかもしれない。「農業のイノベーションを維持するためには、若い人材プールを育成する必要があります」と彼女はいう。
インの起業家としての第一歩は教育分野だった。2014年、彼女は香港で早期教育センターのBebegarten Education Centerを立ち上げ、2018年に英語教育グループのMonkey Treeに売却した。インは香港大学教育学部を卒業し、以前は中国本土の青少年に教育と医療支援を提供する非営利団体Yanai Foundationに勤務していた。
インは、農業と食料の安全保障が私たちの未来の基盤を作るものだと述べている。「私たちはみな、食べなければなりません。農業が過酷な労働であるという古いイメージを持ち続けるべきではありません。確かに大変な面もありますが、それは有意義なことで、本当に良いビジネスにもなり得るのです」と彼女は語った。
(forbes.com 原文)