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2023.07.06 08:00

アジアの「農業テック」の最前線を注視する香港の女性投資家

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オーストラリアにある家族の農場で、クローディン・イン(Claudine Ying)はアボカドや30種類以上の果物を栽培している。彼女は、土壌や水、土地について学んだことがきっかけで「まず農家を助ける」ことを使命とするベンチャーキャピタルを立ち上げた。

「農業があるからこそ、私たちは食料を得られるのです」と、CGVベンチャーズのパートナーであるインは、香港のオフィスから語る。

香港市場に上場するファッション小売企業エスプリの元会長で、ビリオネアのマイケル・イン(Michael Ying)の長女である彼女が、農業に投資をするのは意外なことに思えるかもしれないが、彼女が農業に関心を持ったのは「家族の趣味」がきっかけだったという。2020年に彼女は、元ゴールドマン・サックスの財務担当で現在はファンドのパートナーを務めるミミ・ラウ(Mimi Lau)とともにCGVを立ち上げた。

CGVは、イン・ファミリー・オフィスの一部門としてフードテックとアグリテック(農業テクノロジー)分野のスタートアップにアーリーステージの投資を行っている。

投資先にはフォーブス「AI50」に選出の企業も

これまでのところ、CGVのポートフォリオは10社に及び、9社が米国、1社が香港に本社を置いている。そのうちの1社のサンフランシスコを拠点とするBrightseed(ブライトシード)は、昨年のフォーブスの「AI50」に選出され、昨年5月のシリーズBラウンドでシンガポールのテマセクの主導で6800万ドル(約98億円)を調達した。さらに、健康的で持続可能な「培養油」を開発するフードテック企業Zero Acre Farmsは、ヴァージン・グループやCollaborative Fund、俳優のロバート・ダウニー・Jr.の投資会社Footprint Coalitionの支援を受けている。

CGVは何百もの「革新的でクレイジー」なアイデアを選別し、投資先を絞り込む。そして、5年から7年という投資期間を視野に入れつつ、プロダクトの背後にある科学的リスクが取り除かれているか、そのソリューションが「必要とされるものか」、創業者に十分な経験と能力があるかを吟味する。

それでも、最先端のフードテックやアグリテックを開拓するための決まったレシピはないとインはいう。彼女たちは現在、中国やブラジル、ヨーロッパ、イスラエルなど、国を問わずさまざまな起業家と面談している。

CGVのポートフォリオの目玉の1つは、人工知能(AI)を搭載した自動除草機を製造するアグリテック企業のFarmwise(ファームワイズ)だ。同社のセンサーはトラクターに「目」を与え、不要な植物を識別するのに役立つ。ラウは、このスタートアップの事業について詳しく知るために、カリフォルニア州サリナスの畑に赴き、人間の目では判別が難しい雑草を瞬時に見分けるテクノロジーに感銘を受けた。CGVは、2022年のシリーズBラウンドで当初の予定を上回る4500万ドルを調達したFarmwiseに出資した。
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編集=上田裕資

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