家具をもっとサステナブルに。オカムラが目指す循環社会とは

田中友梨
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──策定後、お客様の反応は変わりましたか。

多くの反応がありました。それまでにも私たちのことを知ってくださっている方はいたのですが、改めてどんな取り組みによって製品が生まれているかを具体的に理解していただく機会になったと感じています。

たとえば「脱プラ」と謳っていても、「隣にプラスチックを使っている製品があるじゃないか」と言われてしまうのです。これまでは、それに対する返答が難しかったのですが、サーキュラーデザインを定めたことによって「これはプラスチックを使っているけれど、循環型の材料を使っています」と伝えることができるようになりました。

他方、グリーン購入法だけではどうしてもフィットしない循環プロセスもあります。たとえば、「ポストコンシューマー」と言われるように、一度外に出た製品を再び購入する場合には適用されるのですが、社内で出た不用品や余ったものを購入する場合はカウントされません。

しかし、社内で出たロスを原料化して再利用することも、世の中全体で見れば非常にいい取り組みのはずです。

それを体現する枠組みはまだないのですが、オカムラではきちんと示していく方針です。それによって、日本に自社工場を持って材料の管理からものづくりに携わっていることが伝わり、安全安心な製品であることをお客様へ訴求する機会にもなっていると思います。

バイオマスプラスチックと3Dプリンターを使った「Up-Ring(アップリング)」の製品。ショールームでは原料と製造プロセスが展示されている

──サーキュラーデザインの中で、一口に「サステナビリティ」と言ってもCO2削減や再生素材など色々な選択肢があると思います。オカムラの中で調達の考え方や優先順位はあるのでしょうか。

一番はCO2削減です。当社も2050年のカーボンニュートラル宣言をしており、その過程である2030年に向けては2020年比で半分という数字目標を出しています。私たちの製品ユーザーには同じ目標を持っている方も多くいますので、共に貢献できるような材料を選定することが求められていると思っています。

もう一つは、枯渇原料かどうかです。有限資源からできたプラスチックをいかに長く使い続けるかは、次の世代に向けて確実に取り組んでいかなければいけない課題です。脱プラも一つの策ではありますが、やはりこれまでの生活を支えてくれているプラスチックというものの優位性は続くと思いますので、いかにしてリソースを保っていくかを考えています。

資源が枯渇してきたら、もちろんコストが上がってきますから、枯渇資源に由来した製品開発や生産は長続きしないと予測されます。当社もたくさんの製品をマーケットに出しますから、廃棄や循環してきたものをシュレッダーにかけて燃料にすることをやめて、代わりに自分たちの材料にすることによって、ユーザーにご満足いただける製品を出すことができます。

なおかつその供給範囲が広いことは重要です。たとえば100個しかない商品なら個人単位になってしまいますが、1万台あれば色々な日本のオフィスが使いやすく、働きやすくもなりながら、かつ経済合理性のある製品ができると思います。

化石燃料が今後どうなるかはとても気になっています。循環させることもありますし、バイオ由来のバイオマスプラスチックの利用にも取り組んでいかなければいけないということで、2021年に実験的にバイオマスプラスチックと3Dプリンターを使った「Up-Ring(アップリング)」というプロジェクトで製品をつくりました。世の中に出ている環境に関連したワードは一通り導入してみて、市場に出せる強度や基準をクリアしたものをマーケットでご紹介するという形を取っています。
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文=Circular Yokohama

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