そこはメーカーである私たちが最も力を出せるところです。もともとプラスチックも私たちが欲しいものを化学メーカーに依頼して作っていただいてることもあるので、どうすれば実現できるか、ある程度の予想はできました。少し時間はかかりましたが、使用するプラスチック材料について理解を深めて、各メーカーに「この椅子のこの形なら、こういうものが必要」と具体的に伝えられた点も大きかったと思います。
家具はもっとサステナブルになる。様々なプロジェクトで可能性を広げていきたい
──サーキュラーエコノミーを実現するにあたって、感じている課題はありますか。「家具はもっとサステナブルな製品になる」ということを広く理解をしていただくことが、私が今考える一番大きな課題です。基本的にオフィス家具ビジネスは法人向けが主体なので、家具にどういう材料を使っているかやマーケットの仕組みを知らない方が多いです。
広く知っていただくため、2022年には伊藤忠商事が主体で行っている「RENU®(レニュー)」プロジェクトに参画しました。アパレル産業で出る色々なロスをもう一度原料から糸にするというプロセスで、当社の工場で出る椅子の張り材の端材も使っていただいたり、オフィス家具に廃材を使っていたりすることもアピールしています。
このように、他の産業が行っているプロジェクトにも積極的に参加していき、世の中の材料を循環させる手助けになれたらいいと思っています。
──今後、目指していることを教えてください。
色々な材料が市場に出てきてそれらを循環させようという時に、私たちが出口戦略のひとつになりたいです。オカムラの活動についてお客さまにご説明をすると「オフィス家具って、こんなにたくさん材料を使うんですね」と言っていただくことが多いです。まだ一般に知られていないことをアピールしていかなければいけないと思います。
もちろん普段のビジネスでは同業との競争がありますが、業界全体でタッグを組んで進めなればいけないこともあるはずです。まだそこまで至っていないのが現実なので、2050年に向けて歩調を合わせていきたいです。
編集後記
2021年からサーキュラーデザインの策定や再生可能エネルギーへの切り替え、未利用材の活用や環境認証の取得など、サーキュラーエコノミーに関連するお知らせを続々と出していたオカムラ。今回お話を伺って、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の策定やプライム市場ができたことによる影響など、改めて経済と環境が密接につながっていると実感しました。オカムラさんのサーキュラーデザイン策定のストーリーで印象的だったのが、最初は点線だった循環の輪が、1年間の取り組みのなかでパートナーを見つけ、実線でつながったというお話。サーキュラーエコノミーの実践においてパートナーシップは重要な鍵を握ることはもちろん、自社が持っている技術やインフラ、今できていることとできていないことを整理し、認識することが次の一歩につながるのだと感じました。
法人向けのビジネスは一般消費者に広く知られる機会は少ないかもしれませんが、オフィス家具のように取引の規模が大きいBtoB企業や業界に目を向け、「もっとサステナブルになる」という可能性や選択肢をより多くの人が知るようになることが、サーキュラーエコノミーの実現に近づくヒントのように思います。
【参照サイト】
・会社オカムラ
・GREEN WAVE
・RENU®Project
・環境省 グリーン・バリューチューンプラットフォーム
・環境面と機能面に配慮した新しいスタンダードとなるタスクシーティング「Potam(ポータム)」を発売
※この記事は、2023年5月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(上記の記事はハーチの「Circular Yokohama」に掲載された記事を転載したものです)