具体的に動き出したのは2021年の1月頃です。ただ、各担当がアイデアをあたためていたこともあり、私が「こうしたい」と言うと「じゃあ、こういうことはどうですか」と意見を述べてくれるなど、賛同してくれるメンバーが非常に多かったです。
──それ以前から、社員の皆さんに意識が浸透していたのでしょうか?
サーキュラーエコノミーやサーキュラーデザインを調べると、エレン・マッカーサー財団のバタフライダイアグラムが出てきますよね。生物的サイクルにも技術サイクルにも、そのままの図ではオフィス家具はフィットしないのです。
私たちはものづくり企業なので、自分たちがどういうプロセスで物を作っていくか、それをマーケットに出した後にどういう循環をするかといった説明が必要です。オフィス家具の循環があり、オカムラの中でもものづくりの循環があるので、それを反映しないと、お取引先である原材料供給のパートナーにも伝わりません。
お客様を含め、関係する皆様に一目で製品がどこで、どういうプロセスでできたかを理解していただける形を目指しました。
東京都千代田区にあるオカムラ ガーデンコートショールームの様子。最近ではよりオフィスの快適さを求める企業も多いという
──サーキュラーデザインを策定されて、社内全体で理解を深めるために工夫したことはありますか?
社内での勉強会を相当の時間行いました。
他社と家具の性能や価格で戦う部分はありますが、オカムラが大事にしていることを発信しきれないままに価格で勝負してしまうと、せっかくの製品価値が伝わりません。「お客様の中には製品価値を求めている人がたくさんいるはずだから、適切な説明をしましょう」と、全社で勉強し理解を深めました。
特に「サステナビリティ、SDGs、CSR、ESGという4つの言葉の最上位にサステナビリティがある」という考えのもとにオカムラが提案する家具の説明ができるよう、とても時間をかけています。また、開発側は「世の中はこの方向に向かっているから、こうしてほしい」という大義があるのですが、最前線にいる営業は短期的なビジネス思考になりがちなところがあるので、両者の考え方を混ぜ合わせないように工夫しました。
2021年にサーキュラーデザイン思考について発表した段階ではまだ説明が十分ではない部分もあったと思うのですが、そこから1年かけて勉強をしてきました。新しい図を出した今、皆が自信を持って営業している姿は本当に素晴らしいなと思います。