はい。オフィスそのものに関する法律ではないのですが、たとえば学校に対してはより厳しい条件があります。当社はオフィス家具を製造販売していますが、お客様には教育機関の方もいらっしゃるため、非常に高い管理基準を設けているという背景があります。
──大企業の場合、サプライチェーン排出量のScope3(※)、つまりエネルギーだけではなく、家具調達のCO2も見ていかなければいけないと思います。そういったご要望も2020年以降増えているのでしょうか?
とても多いです。特に、2022年にプライム市場ができたことによる影響が大きいと感じています。Scope3に関して、今までははっきりさせなくてもよかったのですが、プライム市場にいる企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に則って物品の購入に関する数値と目標を出さなければなりません。
オフィスで必要な買い物のうち、オフィス家具が占める割合はとても大きいです。そして、金額が大きいだけではなくCO2排出量も多くなることにも気づいている方が多くいらっしゃいます。私たちもそれを踏まえて取り組みを行っています。
※サプライチェーン排出量
事業者自らの排出だけでなく、事業活動に関係するあらゆる排出を合計した排出量を指す。つまり、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の流れ全体から発生する温室効果ガス排出量のこと。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
出典:グリーン・バリューチューンプラットフォーム|環境省
サーキュラーデザインを策定したことで「なぜサステナブルなのか」が明確になった
──オカムラでは2021年11月に、カーボンオフセットの開始とサーキュラーデザインの策定を発表されていますよね。なぜサーキュラーデザインを策定しようと考えたのでしょうか。世の中には「脱プラスチック」や「CO2を減らしましょう」といった、環境に関する耳心地の良いワードがたくさんあります。私たちのお客様にも、環境に関する情報を求めている方が多いです。
その中で、たとえばプラスチックを一切使わずにスチールだけで作った家具を作って「脱プラだね」と言っていただいたり、従来に比べて軽い椅子を作って「CO2削減だね」と言っていただいたりしました。
ただ、一つひとつの製品で環境のキーワードで説明ができて、お客様も納得して購入してくださっていても、どうも的を射ていない感じがしていました。というのは、一つの製品の企画段階でその時に思いついたアイデアが通ってしまう部分もあり、製品開発全体のポリシーとして確立されていないという課題があったためです。
サーキュラーデザインを策定したのは、開発、生産、販売の部門も皆、同じポリシーに則って「この製品はここがサーキュラーなんです」「この部品をこう使っています」と言えないと、オカムラがサステナブルな会社だとは言えないのではないか、と思ったことが理由です。
オカムラの「サーキュラーデザイン」思考の概念図