家具をもっとサステナブルに。オカムラが目指す循環社会とは

田中友梨
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自社の物流網を活用。一社だけでは実現できない循環の輪を取引先とともにつなぐ

──Re:birthプロジェクトについて、どういった取り組みをされているか教えてください。

まさに「リバース=再生する」で、部品を材料に戻すプロジェクトです。2021年にサーキュラーデザイン策定を発表した時点では、実は一番外側に書いた円が途中から点線になっていて、まだ実現できていない状態でした。

オカムラが2021年にサーキュラーデザインの策定を発表したときの図。一番外側の「リサイクル」が点線になっている

なぜここが点線だったかというと、私たちは加工メーカーで原材料を作っているわけではないので、どうしても原材料を作るメーカーとコラボレーションしないと実線には行きつかないのです。

家具の材料で一番多いのは鉄(スチール)です。非鉄金属でいうとアルミが多くて、次にプラスチック樹脂や張り材、あとはテーブルに使う木材が主な使用材料になります。

鉄とアルミは既にインフラがあり、色々な分別方法で世の中に還元されますが、プラスチックや張り材は、私たちが自ら動かない限り循環しないのです。端材にシュレッダーをかけて細かくしたものを固めてサーマルリサイクルするのですが、プラスチックはプラスチックに戻して使いたいというのがプロジェクトの本質的な望みです。

そこで今年はパートナーを見つけて、私たちが自社製品として使ったものをお渡ししてもう一度材料として使う仕組みを整えました。その第一弾がタスクシーティング「Potam(ポータム)」に使った脚です。

私たちは法人向けの販売がメインのため、一度販売した製品が廃棄になる場合は、自社の物流網を使って私たち自身がそれらを引き取ることが可能です。それが今回のRe:birthプロジェクトにおいても優位な条件になっています。その強みによってプロジェクトを実現できたことに、オカムラの力を感じました。

環境面にも機能面にも配慮した「Potam」

──ポータムのような商品は、通常の新製品よりも開発のコストは多くかかっているのでしょうか。

大きくは変わりません。むしろ既存品に対して新しい材料を使おうとする方が手間がかかります。品質や価格など、色々な条件設定が出てくるためです。

新製品の場合、初めに材料はこれを使う、と決めて設計やデザインをするのでアプローチが早く確実だと思います。マーケットに出すと「旧型の製品はないのか」と過去の製品に言及されることもあるのですが、それは宿命のようなものです。エココンシャスなお客様に製品を届けられるよう、実現できるアイデアはどんどん取り入れて新製品にしていこうと考えています。

椅子に座ったときに体重を支えるのは椅子の脚部分で材料として一番強度が要るところですが、ポータムはそんな脚部分がリサイクル素材です。安全安心な製品を作るためには、技術的に強度を出すことが一番難しい脚をクリアしないと次の段階には行けないと思っていました。

ほかの部品も決して簡単ではありませんが、お客様が最も気にする部分から改良することによって、私たちも製品に自信が持てるのです。

オフィスチェアとして使用済みの樹脂脚を回収し、分別・粉砕を経て、再び新たな樹脂脚として生まれ変わったリサイクル脚
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文=Circular Yokohama

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