スポーツ

2023.04.23

大谷翔平に学ぶ 憧れの存在を「超えて行ける人」の思考力

MLBのロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平選手 / Getty Images

先日のWBCは、その様々な瞬間が後世に残る大きな実績と希望になった。日本のチームの優勝、そして、選手たちのカッコつけない感じ。そして、やはり大谷選手の存在だ。

特筆すべきは決勝・アメリカ戦直前のかけ声「憧れるのをやめましょう」だったと言える。文言だけでなく、声音、表情、そこに向かう姿勢すべてにおいて、「超えていく人」のそれだったと、今改めて映像で振り返って再認識させられる。

正に世界を背景として生きている、今の時代の申し子のようなその在り方、そして声出しだった。

その声出しと映像をもう一度見てほしい。



“僕からは1個だけ。憧れるのをやめましょう。ファーストにゴールドシュミットがいたりとか、センター見たらマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたりとか。まあ野球やっていれば誰しもが聞いたことがあるような選手たちがやっぱりいると思うんですけど。今日1日だけは、やっぱ憧れてしまったら超えられないんでね。僕らは今日超えるために、やっぱトップになるために来たので。今日1日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ行こう!”

勢いはある。しかし、力みはない。余計な力が入らないことで、試合に全力を注げるのだろう。

また、「憧れ」という、状況によっては思考や判断の呪縛ともなりかねない切り口でチームメイトを解放するスイッチを入れた。自らにも言い聞かせたのだろう。そうすることで、余計なことを考えたり迷ったりせず、試合に全精神を集中できるのだ。

選手たちの「迷い」の数が激減した

人が一日に行う決断の数は大小取り混ぜ最大3万5000にものぼる。これは、ケンブリッジ大学のBarbara Sahakian氏の研究で言われていることだ。

その点においても、大谷選手の声かけは有効だった。試合時における日本チームの選手たちがしなくてはならない決断(迷い)の数が激減したと言っても過言ではない。

人は迷った瞬間にひるむ。その瞬間スキができ、弱気にもなる。同時に「決める」というストレスを毎回抱え、それが積み上がっていく。この声かけは、迷いを払拭し試合に使えるエネルギーへと変える行動だった。当然、選手のパフォーマンス向上にもつながったのだ。
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