日本の消費者は要求水準が高い
──業務や積載量を効率化しても、ドライバーの負担や費用をどれくらい削減できるのかがわからなければ対策は進みません。どこが主導するべきなのでしょうか?野田:日本の場合は、メーカーも小売も物流も規模の小さい企業が多く、大手でもシェアが数%という状況なので、どのプレイヤーも全体へのインパクトが大きくないという問題があります。いずれかのプレイヤーが主導してシステム、プラットフォームを作ったとしても規模が小さいので、第三者が主導して個社間をつなぐようなプラットフォームが必要になります。
──メーカー、小売、運送業者のいずれも難しいということは、消費者が何かできることはあるのでしょうか。
井村:日本の消費者は、納期、サービス品質について非常に要求水準が高いということを改めて認識することが大切だと思います。注文の翌日配送が当たり前になっていて、天候が悪くても道路事情が悪くても翌日配送を求めるので、地方にも倉庫を用意せざるを得なくなっています。
消費者が「翌々日配送でもいい」となれば、メーカーのディストリビューションセンター、運送センターの立地が変わるでしょう。
とはいえ日本の消費者もサステナビリティやSDGsの考えが広まるにつれて、少しずつ変化してきています。環境への影響を考えて買うものを変えるように、荷物の運び方を選べるようになれば、日本の物流も変わるのではと予測します。
野田:荷物が届くまでのリードタイムが長くなる、配送料が上がるといった変化をきっかけに、消費者が物流業者のことを考えるようになるのではないでしょうか。環境に優しいから空輸便よりも鉄道便を選ぶというように、消費者が選択できるようになれば、小売も変わるし、卸・メーカーも変わると思います。
>>後編へ続く
井村直人◎東京大学先端科学技術研究センター先端物流科学寄付研究部門 特任研究員。東京大学農学部を卒業後、味の素ゼネラルフーヅ(現味の素AGF)入社。味の素ゼネラルフーヅ物流部長、同社生産技術統轄部長、開発研究所長、生産開発本部副本部長常務執行役員などを歴任し、飲料製品を中心とした研究開発やSCMに従事。2019年に東京大学で初めて物流の教育・研究を行う講座となる先端科学技術研究センター先端物流科学寄付研究部門の特任教授に就任。2022年より現職。
野田和伸◎NDX 代表取締役。東京工業大学大学院 理工学研究科修了後、アクセンチュアに入社、24年以上のコンサルティング経験を有する。うち7年間は運輸・物流・旅行業界統括マネージング・ディレクターとして物流業界のクライアントに対する数々のプロジェクトを経験。2021年1月にNDXを設立、物流系スタートアップ企業を中心に10社程度のアドバイザーを兼任。
三井朱音(聞き手)◎Avery Dennison マーケットディベロップメントディレクター。大学卒業後、デロイトトーマツコンサルティングにて航空、宇宙防衛、自動車、重工業等への顧客へのコンサルティングに従事し、2014年にAvery Dennisonに入社。アパレル顧客へのRFID導入やバングラデシュをはじめとする各生産拠点におけるカイゼンプロジェクトなどをリードし、現在は物流/サプライチェーンの観点から物流・小売企業へのデジタル技術導入の戦略立案や実装支援を行う。
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