アート

2023.05.31

アートとテクノロジーの錬金術師、ケヴィン・アヴォッシュ

ケヴィン・アヴォッシュ

日本に迫るAI危機

──ChatGPT, Midjourney, Stable Diffusion...様々な生成系AIに注目が集まる昨今をケヴィンはどのようにみているのか?

私たちはすでにAI技術によって作られているので、そのような未来から逃れることはできません。ただ楽観視をしてはいられません。おそらく今は危機の初期段階にいるのでしょう。例えば、ソーシャルメディア上の偽の現実を自分自身が持ちたいと思っても実現できないため、十代の若者たちがうつ病になることがあります。しかし、ほとんどの場合、最初からソーシャルメディアには現実はないのです。AIアルゴリズムが生み出す偽りの現実に悩まされているだけなのです。

これは、世界中で起きていることですが、特に日本ではこの危機が迫っているように見られます。私が出会った多くの日本の若者たちが他の人と親密な関係を築くのが難しいと言っています。実際、これは他の国では見られないほどの状況です。家にいて他人との関係を望まない若者たちがいますが、それらはライフスタイルの選択のようですが、あるいはテクノロジー、ゲーム、アニメによって促されているのかは分かりません。

はっきりさせておきたいのですが、私はテクノロジーがこれらの問題の原因だとは言っていません。ただ、子供たちには早いうちから、テクノロジーとの関わり方について警戒心を持つよう教えるべきだと思います。

芸術的価値と貨幣的価値

──あまたあるケヴィンの作品のなかで、私が得に刺激を受けたのがケヴィン自身の血液とブロックチェーンを結びつけた『I AM A COIN』である。どのような経緯で生まれたのか?

アーティストとして商業化されることへの反発で生まれた作品が『I AM A COIN』です。『ポテト #345(Potato #345)』が100万ユーロで販売されたことを起因して、数年間、人々は私の芸術的な価値よりも、私の作品の金銭的価値だけを気にしていました。もちろん、アーティストにとっては食事に困らない生活はありがたいことですが、金銭的な価値だけを見られるのをなんとかしたいと考えておりました。2013年からブロックチェーン技術を使って遊んでいたので、それを使ってアートを作ることにしました。
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