アート

2023.05.31 18:00

アートとテクノロジーの錬金術師、ケヴィン・アヴォッシュ


私は時間を掛けずに、被写体の取り繕った仮面を剥がし、素の魅力を引き出すことができたので、ハリウッドでは大きな需要が生まれました。おかげ様でジョニー・デップやオノ・ヨーコのようなセレブリティの写真も撮影してきています。

幸いなことに、写真を取ることはテクニックではなく、私にとって呼吸するようなものです。だから、テクニックを考えることはありません。テクニックよりもアーティストとしての私のポートレート撮影で大切にしていることは、被写体の頭から様々な邪念を剥がすことです。私たちは先入観を持って写真撮影に臨みます。どのようにしたら最も魅力的に見えるか、とか、カメラマンに満足してもらいたい、などの先入観をもって撮影に臨みます。

ですが、私は撮影のときに無になります。どのような感情も持たずに撮影します。写真を撮る側が恐怖を感じると、私の恐怖が被写体に投影されます。なので、たとえ被写体の耳から血が出ていても平常心を保ちながら撮影を続けることを心がけます。

私の撮影スタイルは、被写体が何をすべきか、何をすべきでないかについて考えないように徹底することです。そして素早く撮影する。私が欲しいのは、マスクとエゴを取り除いた純粋な人間です。そのようなスタイルで撮り続けると個々の人のポートレートではなく「共有された人間の経験」がポートレート写真を通じて現れるようになります。

おかしいと思わるかもしれませんが、私にとってポートレート撮影はビジネスではなく、サイコロジカル・セラピー(心理的な療法)なのです。他の人のポートレートを撮らないで過ごすと、私の人生は崩れ落ちます。なぜかはわかりませんが、それは事実です。

そして、それが何度も起こるので、もう一度試すことはありません。18年前には、私はホームレスでした。すべてを失い、ホームレスになりました。今は子供が二人います。もう二度と起こらないことを願っていますが、3週間から4週間誰かのポートレートを撮らないことが続くと、物事がうまくいかなくなります。なので、急いでポートレートを撮ります。この、自分のエゴを脇に置くプロセスは、私にとってはセラピーそのものです。私自身のエゴを排除しない限り、私が望むポートレートは撮れません。

強調させていただきたいのは、私は自分自身を写真家としてではなく、自分自身のセラピーのために写真を使っている人間である、ということです。もう一つ大切なのは、私たちは皆、写真家である、ということです。
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