アート

2023.05.31

アートとテクノロジーの錬金術師、ケヴィン・アヴォッシュ

ケヴィン・アヴォッシュ

"Potato #345"

"Potato #345"

キッカケになったのは、2017年。世の中ではICOがもてはやされていたときです。私はシリコンバレーにも知り合いが多いのですが、あるスタートアップの友人が資金調達をICOで行うことを計画していました。私は、「どれくらいのお金を調達しようとしているのか?」と聞いたところ。彼らは、「20万ドルを調達しようとしているのだが、ICOにすると、おそらく2000万ドルくらい調達できる」と言いました。それを聞いて、私は「ちょっと待って、2000万ドルも必要なの?」と質問しました。彼らは「いや、必要じゃないけど、もらえるならもらう」とのこと。でも、2000万ドルを調達したら、人々に何を提供するのか、責任を感じないのかと私は考えました。「わからない」と彼らは答えます。

目的も明確ではないなかで資金調達をする手段としてICO、ブロックチェーンを使うというのはどういうことなのか?そこに疑問を感じながらも、ICOと自分自身の商品化について考えていたときだったので、自分自身を通貨の形にすることは面白いと思いつきました。

「もし私自身がコインだったら、どうなるのだろうか?」という疑問点からスタートしたのが『I AM A COIN』です。そしてブロックチェーンに自分自身をもっと意味深くつなげるにはどうすればいいか?と考え思いついたのが、私の血でした。


"I AM A COIN"は、"私はただのコインなのか?"という疑問からスタートしました。イーサリアム・ブロックチェーン上のERC-20トークンであるIAMAコインを1000万枚作成し、それぞれが小数点以下18桁に分割できるようにしました。この1000万枚のアートワークがバーチャルな作品を構成しているのですが、私の身体を通してバーチャルとフィジカルを意味を持って繋ぐフィジカルな要素も欲しいと思っていました。では、どのように意味を持たせるか。そこで考えたのが、ブロックチェーンにおける秘密鍵と公開鍵の仕組みです。秘密鍵があれば、公開鍵を推論することができますが、その逆はできません。つまり、一方向にしか機能しないのです。コントラクトをブロックチェーンにデプロイすると、コントラクトアドレスが生成されます。そのコントラクト・アドレスをゴム印にしてもらい、それを使って自分の血を紙に刷り、物理的な作品として仕上げる。これにより物理的な作品と、私の血液を介した仮想的な作品との間に、意味のあるつながりが生まれました。2018年1月にこのプロジェクトを発表したところ、1週間も経たないうちにCNNをはじめとするテレビ局に取り上げられました。非常に大きな反響がありました。

私の芸術家としての成功基準は、どれだけ素早く、人々が私の作品に触れ、アイデンティティや価値観についての考え、会話に移してくれるか、です。私の作品を前に数時間座り込んで考えてほしくはないのです。作品を見て、「何これ?」と思い、夕食の席で話題にしてほしいのです。私の作品は、意味を理解するのに数時間かけるアート作品ではありません。






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