アート

2023.05.31

アートとテクノロジーの錬金術師、ケヴィン・アヴォッシュ

ケヴィン・アヴォッシュ

ピカソやダリがナプキンに描いた簡単なスケッチでレストランの食事代を払ったとか、富裕層が絵を取り合ったとか、そういう有名な芸術家の話を幼い頃から知っていたので、若く未熟なアーティストであった私は、この力に魅了されたことは確かです。

私にとって、アーティストは社会の文化的な柱として大きな力を持っています。そして、彼らはお金を印刷する力を持っているように感じました。「アーティストとは錬金術師のようなもので、一見何もないように見えるものを、文化的価値や、そう、金銭的価値に変えることができる。」この後者の側面は、そう、ある意味、お金を刷っているようなものです。

同時に私は科学や技術に興味がありました。なぜなら、科学者であることは高貴な職業だと感じていたからです。特に、技術ではなく、科学が特に興味深かったので、大学では微生物学や認知科学を学びました。

私が興味を持っていたのは、科学的知識を得ることで、人生の本当に重要な問いに答えが得られると思ったからです。アーティストとして自分を認識しながらも、科学者を神のように思っていました。しかし、私の経験では、科学的知識では人生の重要な問いに答えが得られませんでした。科学や数学では、それらの問いに答えることができませんでした。それとは対照的に、アートは私により深い理解に近づけてくれました。

「真実 TRUTH」は私の作品の中で繰り返し登場するテーマです。真実は抽象的な概念ですが、アートが私をより真実に近づけてくれます。真実にたどり着くわけではありませんが、真実に近づけてくれるような感覚があります。

サイコロジカル・セラピーとしてのポートレート撮影

最初にアーティストとして自分を認識したのは1989年でした。私はベルリンに住んでいたのですが、ベルリンの壁崩壊、中国の天安門広場事件など時代の変化に興奮していた頃です。その頃、様々なものに興味をもっていたのですが、若くてお金が必要なときの私が見つけた道はカメラを使って人々のポートレートを撮ることでした。

私が撮る写真の特徴は「正直である」ことです。被写体が私のカメラの前だと、正直な表情をしてくれることが特徴です。正直であり、人工的ではない写真。見ていると、その写真から被写体の正直さが伝わってくる写真。私はハリウッドで育ちましたが、ハリウッドは人工的なものばかりです。

そしてハリウッドの誰もが写真が必要です。オーディションの際に写真が必要です。だからみんないつもニーズがあり、有名人たちはいつも良い見た目でいなければならず、しかも、時間もないのです。
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