アート

2023.05.31

アートとテクノロジーの錬金術師、ケヴィン・アヴォッシュ

ケヴィン・アヴォッシュ

シンセティック・フォトグラフィ・ムーブメント(合成写真ムーブメント)

──現在ケヴィンが興味を持っているエマージングテクノロジーはなんなのか?

機械学習や人工知能の分野がますます興味深くなっています。私はいつも、カメラやフィルム、従来の道具を使わずに、コンピュータを使って画像を生成する「ジェネレーティブ・フォトグラフィ(生成写真)」に興味がありました。だから、過去にはレーザーやGAN(敵対的生成ネットワーク)の初期技術で遊んでいました。MidjourneyやDALL-Eなどの画像生成は公開モデルを採用していますが、私は幸いなことに自分のGANプライベートモデルを作成して画像生成を行うことができます。私はフォトグラファーなのでそのデータを使い、自分の画像生成モデルを作ることで素材に近づくことができると感じています。この知識とインフラを構築するために何年も費やしてきました。

「ポスト・フォトグラフィー」という言葉が何年も前に流行りましたが、私はこの言葉に違和感を感じています。現在、多く人々が制作しているものを「シンセティック*・フォトグラフィ」と呼びたいです。写真における真実に挑戦し、私たちが誤った情報や偽情報にさらされていることを思い出させる「シンセティック・フォトグラフィ」に脅威を感じる人もたくさんいるようですが、 この論争と、真実の本質を検証する機会が増えることが、とても刺激的です。 
(*シンセティック Synthetic = 合成の、作り事の、総合的な)
Calculator (2023) - この作品は、アーティストであるKevin AboschとAIのハイブリッドレンズを通して制作された、旧来のテクノロジーを描いた合成写真のシリーズの一部である。

Calculator (2023) - この作品は、アーティストであるKevin AboschとAIのハイブリッドレンズを通して制作された、旧来のテクノロジーを描いた合成写真のシリーズの一部である。


最初に、ジャクソン・ポロックを例に「それは簡単だ。それは芸術ではない。誰でもできる」と言う人がいる話をしました。

誰でもできるわけではありません。批判する人は何もやりませんでしたし、できませんでした。そして、誰もが違う方法で物事にアプローチします。一人ひとりがHOWではなく、WHYを持ってアプローチを進めれば、どんなに単純な技術でも世界を変えることができます。

ただ、このポスト・フォトグラフィームーブメントでは、皆が現実の完璧な再現を作りたがっている一方で、私は逆の立場をとっています。私の目的は真実を見つけることです。

AIなどの技術論争では、AIが誤報やデマを生成し、悪用目的の人の手に渡ると危険だという話が出てきます。これは画像だけではなく、ChatGPTにも当てはまります。批判する方々は、「真実」がAIによって危険に晒されているかのように話しますが、本当にそうでしょうか? 真実は何十年も前から問われてきています。そもそも真実は存在するのだろうか? 「AIのせいで」真実が危険に晒されているという議論はナンセンスです。
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