ビジネス

2023.05.24

不確実な時代を実業とアートの二刀流で AWS金融事業開発本部長の実践

アマゾン ウェブ サービス ジャパン金融事業開発本部長 飯田哲夫氏(撮影=曽川拓哉)

たとえば一部の人たちだけがクラウドサービスを活用しているような状況では、このサービスのメリットを享受できない人たちが出てきます。日々のビジネス目標の達成だけを考えれば、たくさん使ってもらえる人たちだけに訴求すればいいかもしれません。しかし、そうすると活用する人としない人の差がどんどん開いてしまいます。最終的な判断は利用者に委ねられますが、私たちはすでに、そんな環境すら作り得てしまいます。

ですから事業開発の観点では、自らのビジネス目標の達成だけではなく、マーケット全体の成長を意識して、メッセージを伝えていく必要があります。

このような考え方は、自身が生み出す作品とコミュニケーションすることによって、論理とは異なるレイヤーで生じてきました。日々の目標達成とは必ずしも一致しないこともあるかもしれませんが、ブレイクダウンされたタスク達成を大きく超えた大きな問題意識で、ビジネスや、それをとりまく社会状況に向き合う必要が絶対に生じてきていると思います。まさに、「Success and Scale Bring Broad Responsibility」です。

アーチストとしての飯田氏のHPには、”Life、Society、Technology、Identity、Capitalism”といった項目に分けられて作品か掲載されている(https://www.tetsuoiida.com/)

アーチストとしての飯田氏のHPには、”Life、Society、Technology、Identity、Capitalism”といった項目に分けられて作品か掲載されている


「調和」表現には、光を組み合わせるか、補色を組み合わせるか?

──「Colors United」のコンセプトに、「強いコントラストからも調和を生み出すことができる」ことがありました。ビジネスの世界でも、また社内でも同様なことがあるでしょうか。

絵で調和を表現するには2つの方法があります。1つは近い色を組み合わせる方法、もう1つは補色にあたるような、コントラストの強い色を組み合わせる方法です。

光の三原色はそれぞれが強い個性の色なのに、不思議なことに、混ぜ合わせるとグレーになりますよね。そのことにも関係するのですが、相反するように見える色も、適切に組み合わせれば調和します。逆に、特定の色を中途半端に挿し込むと全体が濁ってしまいます。
© 2021 Tetsuo Iida All Rights Reserved

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人の組み合わせについても同じようなことがいえると思います。ダイバーシティや個性という観点では、同じような人ばかり集めると変化が起きにくい。一方で、個性があまりにも異なる人ばかりを集めると、チームマネジメントが難しく感じられます。ただ、そういう問題は組み合わせが「中途半端だから」起きるのであって、もしも広く俯瞰しながら様々なバリエーションの人を配置することができれば、全体を調和させられるのではないかと思います。
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文=松尾優人 取材・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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