ビジネス

2023.05.24 09:00

不確実な時代を実業とアートの二刀流で AWS金融事業開発本部長の実践

以前、絵を描いたキャンバスを短冊状に切り刻んでもう一度再構成する、という作品群をつくったことがありました。偶然の組み合わせの面白さをテーマにしていたのですが、これも人と人の組み合わせに応用することができました。

組み合わせの面白さを作品から感じ取れれば、仕事上でも同じことを意識的にやってみよう、となります。

© 2021 Tetsuo Iida All Rights Reserved

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──どうやら、ビジネスとアートには共通する点が多いようですね。

論理が重視されるビジネスの世界と、直感が重視されるアートの世界は違うと言えば違いますが、今はその違いを一体化させていくことが求められています。環境によって比重は異なると思いますが、冒頭でお話ししたように、現代社会が「直感」や「感性」を重視するようになったところはあります。

多くのビジネスパーソンが美術館へ行くようなムーブメントが起きているのは、直感や感性が求められている時代において、それこそ直感的に、勘に導かれて「引き寄せられて」いるのかもしれません。

──ビジネスシーンでアートの要素を、たとえばパワポの資料に含めるなど、プレゼンなどで使うことはありますか。

前職、電通国際情報サービス時代は、周囲が私の絵をイベントで使っていました。勝手にプレゼンテーションのテンプレートに入れられたり(笑)。毎年開催していたスタートアップ系のイベントのメインビジュアルも、私の作品でした。

自分ではプレゼンテーションの際などに自らの絵を使うことはありませんが、お客様に個展へ来ていただくことはよくあります。そうすると、アートという、ビジネスとは異なるラインでお客様とコミュニケートすることで得られる「気付き」があります。通常の仕事とは異なる体験を共有することで、感性を理解し合うことができるからかもしれません。

──時間管理の方法など、ビジネスとアートの「2足のわらじ」を実現させる方法について聞かせてください。

平日は創作モードに切り替えるのがなかなか難しいので、創作は基本的に週末です。ただ、展示に関する作業はギャラリーが休みの平日に行わなければなりません。その場合は「あらかじめスケジュールをブロック」する。強い意思で確保するようにしています。

創作活動を仕事の後回しにするようなことはしたくないと考えています。お話ししたように、私にとって創作は仕事から生み出されるもので、課題をよりシャープにする活動です。そしてそれは仕事にも大きなインパクトを与えてくれます。つまり、重要性は仕事と変わりません。

たとえ周囲から「趣味」と思われているような活動についても、自分の中で、たとえば私が感じているように重要性が高いのであれば、ためらうことなく時間を確保するのが大事だと思います。
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文=松尾優人 取材・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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