ビジネス

2023.05.24

不確実な時代を実業とアートの二刀流で AWS金融事業開発本部長の実践

アマゾン ウェブ サービス ジャパン金融事業開発本部長 飯田哲夫氏(撮影=曽川拓哉)

──「直感」と「感性」の時代が到来したと言われています。「分析」「論理」と「理性」だけではすでに勝てない、と言われ始めました。ビジネスにおいても「コンセプト」や「創造性」が重要だと。このことについてどうお考えになりますか?

ビジネスではデータを積み上げて論理的に判断していくことが、説得の材料として必ず求められます。とくにクラウド技術の発展によってデータが蓄積しやすくなったこともあり、データドリブンでの意思決定がより推進されている現状があります。



一方でたしかに、直感や感性が求められるようになったのも事実です。そこには論理的な意思決定だけでは見通しにくい現代社会の状況が背景にあると思います。温暖化による地球環境の変容、世界人口の変容、多様性のさらなる重視、地政学的リスクの増加など、私たちを取り巻く環境にも予測しにくいダイナミックな変化が起きているからです。

そして、取り巻く環境に不確実性が高まるほど、論理的な判断だけでは解決できない問題が頻出します。そこでは五感も含めた動物的な、いわば原始の勘のような、「右脳」的感性をも呼び覚まし、研ぎ澄ます必要があるのではないでしょうか。そういった能力に、データドリブンな要素を追加して判断することも求められてきています。

どちらが良いというよりは、臨機応変に「組み合わせていく」ことがポイントだと思います。


アートは「課題を捉えるためのプロセス」

──ご自身の周辺で「直感」や「感性」を重要視しているリーダーを見かけることはありますか。

組織のトップ層は、自社の枠組みを超えた視点からイノベーションを率いていかなければならない。そのミッションを遂行するために、より大きなビジョン、すなわち「どんな風にマーケット全体を変えるべきか、変えていけるか」を語る人がどんどん増えている印象です。とりわけクラウドの活用に踏み切っていく企業のリーダーは、「全体を捉える」俯瞰的な視点を持っている人が多いと感じます。

──世界のテクノロジー企業で感じる問題意識を「アナログな作品で表現」されています。”ビジネス上の課題をアートで解決/表現されること”について具体的にお聞かせください。

私にとってアートは「課題を捉えるためのプロセス」です。

最初は、アートは「自分の内面を表現していくパーソナルなもの」、仕事は「生活するためのもの」と分けて考えていました。創作活動をする自分と仕事をする自分は別人。仕事をしている自分は本来の自分ではない、と(笑)。

© 2021 Tetsuo Iida All Rights Reserved

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でも、あるタイミングで分けるのをやめたのです。生活のほとんどの時間を使って一生懸命仕事に取り組む自分がいて、絵を描いているのもその「同じ自分である」という事実を認められるようになったのです。それどころか、創作の源泉は仕事の中にあることに気づいたのです。
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文=松尾優人 取材・編集=石井節子 撮影=曽川拓哉

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