そんな中、実業の世界で活躍しながらアクリルアートを中心とした創作活動で評価を受け、定期的に個展も開くビジネスパーソンがいる。アマゾン ウェブ サービス ジャパンの金融事業開発本部長、飯田哲夫氏だ。
学生時代は東大で仏文学を修めた飯田氏に、「不確実な時代」における問題解決に創作活動や文学的な知見をどのように役立てているのか、逆にビジネスが感性や直感の研磨にどのように役立っているのかを聞いた。
業界特性ごと、問題解決手法をカスタマイズ
──まずはアマゾン ウェブ サービス(AWS)で担っておられる役割について、読者に分かりやすくご説明いただけますか。現在は金融事業開発部本部長というポジションで仕事をしています。
お客様にクラウドを活用していただくにあたって、サービスそのものの説明ではなく、「このサービスを使えばどのように金融ビジネスが変わっていくのか、何が実現できるのか」をお伝えしています。そのうえで実際に活用するにあたって障害となる問題を取り除いていく、これらが私の主な役割です。
私のような事業開発のポジションは、AWSではインダストリーごとに存在しています。金融の他に製造、メディア、製薬、テレコム……といった感じですね。しかし、AWSにはもともとはこういった「インダストリー別」の役割は存在しませんでした。当初は「サービス重視」「ジェネラルな問題解決に注力」の考え方で市場に訴求していこうとしていたのです。
ただ、ビジネスが発展していく中で、各インダストリーの特性に合わせて問題解決手法を提案していく必要が起きてきました。そのためAWSでは7年前から、各インダストリーに焦点を当てた事業開発のアプローチにグローバル規模で取り組み始めたのです。私はそのタイミングで金融インダストリー専任として入社したという流れです。
たとえば金融は公共性が高い業界なので、高いセキュリティによるデータの保護やサービスの継続性が求められます。システムの構築に際しては金融インダストリーとして高い基準が定められており、これを守らなくてはなりません。つまり、金融インダストリーの方々は安心・安全を前提としながら新しいチャレンジに取り組まなくてはならないため、イノベーションを起こすことの難易度が高いのです。
そういった個別の問題がインダストリーごとにあります。