アート

2023.05.06

京都で、よそ者だからこそ 国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」の11年

KYOTOGRAPHIE 共同創設者・共同ディレクターのルシール・レイボーズと仲西祐介(c)Naoyuki Ogino

仲西:僕たちはフリーランスで活動しているただの写真家と照明家で、特別なバックグラウンドもなく、このフェスティバルを日本のアート界の中でどのように位置付けたいとか、どう評価されたいとかそういうことは全く考えていません。それよりも、「社会に対して何ができるか」ということを最も大切にしています。

また、あまり頭で考えられるタイプではなく、すべて自分たちの感覚で決めていきます。いまの世界情勢に対して、どんな作品やテーマがいいのか。アーティストが作品に込めているメッセージに適した展示場所はどこか。

それらが決まったら、会場と作品をどう融合できるか、どう空間を使ったら伝わるかということを、アーティスト本人、セノグラファー(舞台や展覧会などで空間デザインを行う)と一緒に詰めていきます。打ち合わせも相当な回数を重ねるので、アーティストたちからは「普通はここまでやらない」と驚かれますが、僕らは他のやり方を知らないんです。

施工会社以外は外注しておらず、スタッフの多くはフリーランスで、各々自分のやり方でタスクとミッションをクリアしてもらう体制。マネジメントができない二人が舵を取っているので、本当に苦労していると思いますが(笑)、そうすることで他とは違う個性ができてきました。建築家やグラフィックデザイナーなどのクリエーターも、長年一緒に実験しながら、一緒に成長してきています。

パオロ・ウッズ&アルノー・ロベールによる展示「Happy Pills」は床や壁の写真も印象的だ。展示空間デザイン:小西啓睦(c)Kenryou Gu

パオロ・ウッズ&アルノー・ロベールによる展示「Happy Pills」は床や壁の写真も印象的だ。展示空間デザイン:小西啓睦(c)Kenryou Gu


深井:会場の数も、前回より増えているのではないですか?

仲西:はい。経営的な視点では、当然、数や経費を減らし、利益を上げていく必要があると思うのですが、僕らにはそういう考えがほとんどなくて。本当に毎回、来場者たちをいい意味でサプライズさせることしか考えていません。あれもこれもやりたい。だから気をつけないと、会場もどんどん増えていっちゃうんです(笑)。

例えば今年、ココ・カピタンというスペイン出身のアーティストの展示は、作品の制作にあたり、京都の花街や伝統工芸、禅塾の方々にご協力をいただいて。彼らを含め、京都のいいところをもっと知らせていかなきゃいけないという使命感から、当初1会場の予定だったのが、結局3会場使わせていただくことになりました。

ASPHODELで開催中のココ・カピタンの展示「Ookini(おおきに)」展示空間デザイン:小西啓睦(c)Takeshi Asano

ASPHODELで開催中のココ・カピタンの展示「Ookini(おおきに)」展示空間デザイン:小西啓睦(c)Takeshi Asano

続けていて「本当に嬉しいこと」

深井:国内のアートイベントは、なかなかハイブランドの協賛を得にくい傾向があります。また京都には文化イベントも数多いこともあってか、地元企業からの協賛を募るのは容易ではないと言われています。ですが、KYOTOGRAPHIEの協賛リストにはそのどちらも名を連ねている。企業とはどういったコミュニケーションを取られているのでしょうか?
次ページ > ハイブランドの協賛が多い理由

インタビュー=深井厚志 文=菊地七海 編集=鈴木奈央

連載

#アートを「ひらく」人たち

ForbesBrandVoice

人気記事