アート

2023.05.06

京都で、よそ者だからこそ 国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」の11年

KYOTOGRAPHIE 共同創設者・共同ディレクターのルシール・レイボーズと仲西祐介(c)Naoyuki Ogino

京都の歴史的建造物やギャラリーなど約20の会場で、写真作品と空間を融合させた展示が一斉に公開される──。京都を代表とするアートイベントとなった「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2023」が、今年も5月14日まで開催されている。

2011年に発生した未曾有の震災をきっかけに、二人のアーティストが企画・構想。毎年ひとつのテーマを掲げて国内外の写真家を招聘し、工夫を凝らした展示でメッセージを伝えてきた。11回目となる今年は、「BORDER」というテーマのもと、個を形成するものであり、ときに孤立や対立、制限を生む目に見えない“境界線”を、15人の作家が可視化している。

京都といえば、日本の中でも歴史が古く、「よそ者に厳しい」と言われる街でもある。KYOTOGRAPHIEはなぜあえてその地を舞台にし、どのように開拓、継続、発展してきたのか。

写真家のルシール・レイボーズとともに、同祭の共同創設者・共同ディレクターを務める照明家の仲西祐介は、「京都以外ではイメージできない」という。アート領域を専門とする編集者・コンサルタントの深井厚志が、その真意を聞いた。

京都が「多面的」であるからこそ

深井:現在、11回目のKYOTOGRAPHIEが開催中ですが、どういった手応えを感じていらっしゃいますか?

仲西:毎回全力でベストを尽くして、自分たちでハードルを上げ続けてきているのですが、そのおかげか、来場者からは「来る度によくなっている」「今年が一番良かった」というような反応をもらっています。

深井:素晴らしいですね。そもそも、KYOTOGRAPHIEを立ち上げられたのはどういった経緯があったのでしょうか? 

仲西:2011年の東日本大震災と福島の原発事故のあと、政府の対応やメディアが流す情報に、国民の命よりも大企業の面目を優先するところが見えてしまって。これじゃあこの国は危ない、誰からもコントロールされないメディア、オープンに話せるような環境が必要だと考えたんです。

それで国内外の情報を受発信するプラットフォームとして、アートフェスティバルという枠組みを選択しました。写真は今を伝えるメディアとして最適です。

また日本では、アートが特別なものになっているというか、一般の人との間にギャップがあるので、そこを埋めていきたい。アートを民主化したいという思いもあります。誰にでも作る権利、見る権利があるし、もっと自由に、自分が感じたまま感じればいい。そこで、作品を美術館やギャラリーから持ち出し、街を会場に展示をするというアイデアが生まれました。

深井:京都という土地を選ばれたきっかけや、京都でなければならない理由は何でしょうか? 仲西さん、ルシールさんともにご出身は京都ではないですよね。
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インタビュー=深井厚志 文=菊地七海 編集=鈴木奈央

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