大リーグ「ピッチクロック」導入に学ぶ、リーダシップの10の教訓

マリナーズ戦でピッチクロックで違反をとられ、苦笑を浮かべるエンゼルスの大谷翔平(2023年4月5日、Steph Chambers/Getty Images)

バッター、アップ(さあ行こう)! 大リーグ(MLB)の新シーズンが開幕し、例年のようにファンや選手は期待を膨らませているが、今年は企業のリーダーや戦略プランナーにとっても思いがけず「勉強」の機会になっている。

というのも、大リーグが新たに導入したルールがどうやら成功しているらしく、企業のリーダーたちに、変化をしたがらない環境にどうすれば最もうまく有意義な変化を起こしていけるのか、実践的な教訓を与えてくれているからだ。

あまり詳しくない人のために説明しておくと、大リーグはこの春、一連の大きなルール変更を行った。いずれも試合のペースを速めることに関連している。その最たるものが「ピッチクロック」と呼ばれる新ルールだ。これにより、投手はボールを受け取ってから、走者のいない場合は15秒以内、走者のいる場合は20秒以内に投球動作に入らなくてはいけなくなった。打者のほうも、残り8秒までに打席に入って構えなくてはならない。さらに、投手がけん制のためにプレートから足を外すのも1打席2回までに限られることになった。

ほかにも守備シフトが禁止されたり、ベースがひと回り大きくなったりもしたが、最も重要なのはピッチクロックの導入で、投手と打者のダイナミズムやベンチの戦略にあからさまな影響を及ぼしている。そのインパクトは球場にとどまらず、ビジネスの進め方などで大きな懸念に直面したときにどう対応すべきなのか、企業のリーダーにも一連の教訓を授けてくれている。

長すぎる試合はファンも敬遠

1. 何か変わらないといけない

のんびりしたところが野球の良さではあるのだが、このところ試合時間はいささか長くなりすぎていた。3時間、4時間という試合はファン離れを引き起こし、非常に重要なマーケットであるX世代やY世代を遠ざけてしまっていた。米国民の関心でも、大リーグはプロフットボール(NFL)に大きく引き離されつつあった。リーダーシップの教訓。何かを変えることは大変だし、リスクもつきものだが、リーダーは顧客マインドをきちんと理解し、勇気を出して意味のある対応をとらなくてはならない。

2. 伝統は足かせにもなる

野球の美点として特筆すべきは、伝統に忠実なところだろう。球場の形からユニフォームのスタイル、統計へのこだわりまで、意識的に進化にあらがうようなところがある。良くも悪くも、ベーブ・ルースがしていた野球とマイク・トラウト(エンゼルス)がしている野球は基本的に同じものだ。リーダーシップの教訓。伝統に安住していると自己満足に陥りかねず、自己満足はいずれ必ず問題を生む。
次ページ > 変化をチャンスに変えるベテラン選手も

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事